• 刑法(各論)ー9.風俗に対する罪
  • 3.賭博及び富くじに関する罪
  • 賭博及び富くじに関する罪
  • Sec.1

1賭博及び富くじに関する罪

堀川 寿和2022/02/10 14:59

意義

賭博及び富くじに関する罪は、偶然の事情によって財物を得喪することを内容とする犯罪であり、次の種類に分類される。

単純賭博罪(刑法185条)

常習賭博罪(刑法186条1項)

賭場開帳罪・博徒結合罪(刑法186条2項)

富くじ罪(刑法187条)

 

単純賭博罪(刑法185条)

 

刑法185条(賭博)

賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

 

(1) 構成要件

賭博をすることである。

主体

限定なし。

行為

賭博をすることである。ただ、財物を賭け、偶然の勝敗を争っても、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき本罪は成立しない。(刑法185条ただし書)可罰的違法性を欠くからである。(大塚、岡野)。ここでいう、一時の娯楽に供する物とは、経済的価値が僅少なものであって、単なる娯楽のためにその場で費消するものをいう。お菓子や飲食物がその例である。

(イ)賭博

賭博とは、判例によると、2人以上の者が相互に財物を賭け、偶然の勝負によってその得喪を決めることをいう。(大S10. 3.28)。必要的共犯である。

(ロ)詐欺賭博

いわゆる「いかさま賭博」は偶然性が認められず、賭博罪は成立しない。欺罔者のみに詐欺罪の成立が認められ、被害者は賭博罪にならない。(最S26. 5.8

 

(2) 実行の着手時期

財物を賭けて賭博が開始されることによって実行の着手が認められ、同時に既遂となる。

 

(3) 既遂時期

したがって、実行の着手があれば、即既遂となる。

 

判例

(最S23.7.8)

 

花札賭博において、賭銭を出し花札を配布したときに賭博の着手があったと見られ、同時に既遂となる。親を決めるためであっても同様である。

 

(4) 刑罰

50万円以下の罰金又は科料。

 

常習賭博罪(刑法186条1項)

 

刑法186条(常習賭博)

1.常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。

 

(1) 構成要件

常習として賭博をなすことである。

主体

賭博の常習者である。本罪は身分犯であり、行為者が常習性という身分を有することに基づく単純賭博罪の加重類型である。常習者とは、反復して賭博行為を行う習癖のある者をさす。(大T3.4.6

行為

賭博をすることである。

 

(2) 刑罰

3年以下の懲役に処する。