• 刑法(各論)ー9.風俗に対する罪
  • 4.礼拝所及び墳墓に関する罪
  • 礼拝所及び墳墓に関する罪
  • Sec.1

1礼拝所及び墳墓に関する罪

堀川 寿和2022/02/10 15:01

意義

礼拝所及び墳墓に関する罪は、次のように分類される。保護法益は、宗教生活上の善良な風俗ないし国民の正常な宗教的感情である。

礼拝所不敬罪(刑法188条1項)

説教等妨害罪(刑法188条2項)

墳墓発掘罪(刑法189条)

死体等損壊・遺棄罪(刑法190条)

墳墓発掘死体等損壊・遺棄・領得罪(刑法191条)

変死者密葬罪(刑法192条)

死体等損壊・遺棄・領得罪(刑法190条)

 

刑法190条(死体損壊等)

死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。

 

(1) 構成要件

死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊、遺棄又は領得することである。

主体

限定なし。

客体

死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物である。

行為

損壊、遺棄又は領得することである。

(イ)損壊

損壊とは、物理的に破壊することである。

(ロ)遺棄

遺棄とは、習俗上の埋葬とは認められない方法によって放棄することである。作為による遺棄と不作為による遺棄の2つに分類できる。

a) 作為による遺棄

死体等を場所的に移転させる等、積極的行為を伴う。例えば、殺人犯が犯跡を隠ぺいするため、遺体を殺害現場から人里離れた山林に埋めたような場合である。殺害後死体をそのままにして立ち去った場合、本罪は成立しない。

b) 不作為による遺棄

不作為による遺棄が成立するのは埋葬義務のある者に限られる。不作為犯は作為義務がなければ成立しないからである。法律上の埋葬義務を負う者は、単に死体をその場所に放置する不作為によっても、遺棄罪が成立する。例えば、前述の殺人犯が親である場合、親は自分の子の埋葬義務があることから、

殺害後死体をそのままにして立ち去った場合、本罪は成立することになる。

(ハ)領得

領得とは、不法に死体等の占有を取得することをさす。

 

(2) 刑罰

3年以下の懲役。