- 刑法(各論)ー9.風俗に対する罪
- 4.礼拝所及び墳墓に関する罪
- 礼拝所及び墳墓に関する罪
- Sec.1
1礼拝所及び墳墓に関する罪
■意義
礼拝所及び墳墓に関する罪は、次のように分類される。保護法益は、宗教生活上の善良な風俗ないし国民の正常な宗教的感情である。
① 礼拝所不敬罪(刑法188条1項) ② 説教等妨害罪(刑法188条2項) ③ 墳墓発掘罪(刑法189条) ④ 死体等損壊・遺棄罪(刑法190条) ⑤ 墳墓発掘死体等損壊・遺棄・領得罪(刑法191条) ⑥ 変死者密葬罪(刑法192条) |
■死体等損壊・遺棄・領得罪(刑法190条)
刑法190条(死体損壊等)
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。
(1) 構成要件
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊、遺棄又は領得することである。
① 主体
限定なし。
② 客体
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物である。
③ 行為
損壊、遺棄又は領得することである。
(イ)損壊
損壊とは、物理的に破壊することである。
(ロ)遺棄
遺棄とは、習俗上の埋葬とは認められない方法によって放棄することである。作為による遺棄と不作為による遺棄の2つに分類できる。
a) 作為による遺棄
死体等を場所的に移転させる等、積極的行為を伴う。例えば、殺人犯が犯跡を隠ぺいするため、遺体を殺害現場から人里離れた山林に埋めたような場合である。殺害後死体をそのままにして立ち去った場合、本罪は成立しない。
b) 不作為による遺棄
不作為による遺棄が成立するのは埋葬義務のある者に限られる。不作為犯は作為義務がなければ成立しないからである。法律上の埋葬義務を負う者は、単に死体をその場所に放置する不作為によっても、遺棄罪が成立する。例えば、前述の殺人犯が親である場合、親は自分の子の埋葬義務があることから、
殺害後死体をそのままにして立ち去った場合、本罪は成立することになる。
(ハ)領得
領得とは、不法に死体等の占有を取得することをさす。
(2) 刑罰
3年以下の懲役。