• 宅建業法ー12.住宅瑕疵担保責任履行法
  • 2.住宅販売瑕疵担保保証金の供託
  • 住宅販売瑕疵担保保証金の供託
  • Sec.1

1住宅販売瑕疵担保保証金の供託

堀川 寿和2021/11/24 13:56

資力確保措置

 宅建業者は、宅建業者でない買主に対して、自ら売主として新築住宅を販売する場合、

新築住宅ごとに、
① 住宅販売瑕疵担保保証金を供託する
② 住宅瑕疵担保保険に加入する
のいずれか一方を選択するかまたは併用して資力確保措置をとらなければならない。

 これらの措置を併せて「資力確保措置」という。

住宅販売瑕疵担保保証金の供託

(1) 基準日

 宅建業者は、各基準日(毎年3月31日及び9月30日)において、当該基準日前10年間に自ら売主となる売買契約に基づき買主に引き渡した新築住宅について、住宅販売瑕疵担保保証金(以下、「保証金」)を供託していなければならない。


(2) 供託所等

 保証金の供託は、当該宅建業者の主たる事務所の最寄りの供託所にする(11条6項)。

 供託は、国土交通省令で定めるところにより、国債証券、地方債証券その他の国土交通省令で定める有価証券をもって、これに充てることができる(11条5項)。その評価額は、国債100%、地方債90%、その他の有価証券80%となっており、この点は「営業保証金」の構造と類似している。

  なお、供託額については出題されることはないと考えられるが参考までに以下の表を掲載しておく。


10年間の供給戸数(※1)供託額(※2)
1以下2,000万円
1を超え、10以下200万円 × 戸数 + 1,800万円
10を超え、50以下80万円 × 戸数 + 3,000万円
50を超え、100以下60万円 × 戸数 + 4,000万円
100を超え、500以下10万円 × 戸数 + 9,000万円
500を超え、1,000以下8万円 × 戸数 + 1億円
1,000を超え、5,000以下4万円 × 戸数 + 1億4,000万円
5,000を超え、1万以下2万円 × 戸数 + 2億4,000万円
1万を超え、2万以下1万9,000円 × 戸数 + 2億5,000万円
2万を超え、3万以下1万8,000円 × 戸数 + 2億7,000万円
3万を超え、4万以下1万7,000円 × 戸数 + 3億円
4万を超え、5万以下1万6,000円 × 戸数 + 3億4,000万円
5万を超え、10万以下1万5,000円 × 戸数 + 3億9,000万円
10万を超え、20万以下1万4,000円 × 戸数 + 4億9,000万円
20万を超え、30万以下1万3,000円 × 戸数 + 6億9,000万円
30万を超える1万2,000円 × 戸数 + 9億9,000万円

※1 床面積の合計が55㎡以下の住宅は、2戸をもって1戸と数える。

※2 算定した額が120億円を超える場合は、120億円とする。


(3) 住宅販売瑕疵担保保証金の供託等の届出等

 新築住宅を引き渡した宅建業者は、基準日ごとに、当該基準日に係る保証金の供託の状況等について、基準日から3週間以内に、その免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。

【届出事項】

① 基準日までの過去10年間に引き渡した新築住宅の戸数
② 供託の措置を施した戸数
③ 保険の措置を施した戸数

※ 供託と保険を組み合わせた措置を執ることも可能ということである。


 新築住宅を引き渡した宅建業者は、原則として、供託をし、かつ、供託等の届出をしなければ、当該基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後においては、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結してはならない。


(4) 住宅販売瑕疵担保保証金の還付等

以下の者は、保証金の還付を受けることができる。

① 損害賠償請求権について、債務名義(確定判決など強制執行ができる証書)を取得した者
② 損害賠償請求権の存在及び内容について当該供託をした宅建業者と合意した旨が記載された公正証書を作成した者
③ 国土交通大臣の確認を受けた者


(5) 供託所の所在地等に関する説明

 供託した宅建業者は、自ら売主となる新築住宅の買主に対し、売買契約を締結するまでに、その住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしている供託所の所在地その他住宅販売瑕疵担保保証金に関し国土交通省令で定める事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。


(6) 不足額の届出・供託

 売主業者は、保証金の還付によって供託額が基準額を下回ったときは、国土交通大臣から不足額の通知を受けた日(または、売主業者が、保証金が基準額に不足することとなったことを知った日)から2週間以内に、その不足額を供託しなければならない。

 売主業者が不足額を供託したときは、供託した日から2週間以内に免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事に届け出なければならない。

 不足額の供託をしない場合、宅建業法の指示処分または業務停止処分を受けることがある。また、届出をしない場合や虚偽の届出をした場合は、履行法により50万円以下の罰金に処せられるほか、宅建業法により指示処分を受けることもある。


(7) 保証金の取り戻し

 新築住宅の引渡しから10年が経過すると、売主業者は瑕疵担保責任を負わなくなるため、不要となった保証金(過去10年間の新築住宅の供給実績に応じて求められる基準額を超過した部分)を取り戻すことができる。取戻しができるのは、①売主業者、②売主業者であった者、③売主業者の承継人である。

 なお、免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事の承認を受けなければ、保証金を取り戻すことはできない。この承認は、取戻し額が過去10年間の新築住宅の供給実績と比較して適切であるか否かをチェックするものである。