- 刑法(各論)ー6.財産に対する罪
- 10.恐喝の罪
- 恐喝の罪
- Sec.1
1恐喝の罪
■恐喝の罪
刑法249条(恐喝)
1.人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを取得させた者も、前項と同様とする。
(1) 構成要件
人を恐喝して財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、又は他人にこれを取得させることである。
① 主体
限定なし。
② 客体
(イ)1項恐喝
他人の占有する財物である。
(ロ)2項恐喝(恐喝利得罪)
財産上の利益である。
③ 行為
(イ)1項恐喝
人を恐喝して財物を交付させることである。恐喝とは、害悪を告知して人を畏怖させることをいうが、相手方の反抗を抑圧しない程度の脅迫・暴行をさす。
cf 強盗罪の暴行・脅迫は、相手方の反抗を抑圧する程度の脅迫・暴行である点と比較。
交付させるとは、恐怖心を生じた相手方の財産的処分行為に基づいて財物の占有を取得することをいう。
判例 |
(最S24.1.11) |
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被害者自ら交付・処分する場合のみならず、畏怖して黙認しているのに乗じて行為者が奪取する場合も処分行為がある。 |
(ロ)2項恐喝
人を恐喝して財産上不法の利益を得、又は他人にこれを取得させることである。
判例 |
(最決S43.12.11) |
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債務者が債権者を脅迫し債務の支払いを一時猶予する旨の意思表示をさせた場合、財産上の利益を得たことになり恐喝利得罪が成立する。 |
判例 |
(大T12.12.25) |
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AがBを脅迫してAのCに対する債務をBに免責的債務引受をさせた場合でも恐喝未遂にとどまる。免責的債務引受を有効に成立させるにはA・B・Cの三面契約かB・C間の契約かいずれにせよCの関与が必要であるからである。 |
判例 |
(大M44.12.4) |
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AがB所有の土地を購入しようと考えたが適正な価格を提示してもBが売却に応じないため、Bを脅迫して売却に応じさせた場合、仮にAが適正価格を支払ったとしても恐喝罪が成立する。 |
判例 |
(名古屋高判S25.7.15) |
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Aが売春婦Bを脅迫して売春代金の対価を断念させた場合、売春契約が公序良俗に反し無効であっても、恐喝罪の既遂が成立する。 |
(2) 実行の着手時期
相手方を畏怖させるに足りる行為である脅迫が開始されたときに実行着手ありとされる。
(3) 既遂時期
財物又は財産上の利益の占有が移転したときに既遂となる。
本罪が成立するためには、恐喝行為の結果、相手方が畏怖し、それに基づいて財産処分行為が行われたことを要する。(因果関係)したがって、恐喝手段を用いて財物の交付を受けても、相手方が畏怖することなく、憐みから交付したときは、恐喝未遂にすぎない。
(4) 刑罰
10年以下の懲役。未遂の処罰規定あり。(刑法250条)