• 刑法(各論)ー6.財産に対する罪
  • 6.財産罪の保護法益
  • 財産罪の保護法益
  • Sec.1

1財産罪の保護法益

堀川 寿和2022/02/10 12:29

財産罪の保護法益

財産罪の保護法益については、財物に対する所有権その他の権利(賃借権等)であると考える「本権説」と、単なる事実上の支配、すなわち占有と考える「占有説」がある。

 

(1) 本権説

奪取罪の保護法益は、所有権その他の本権であるとする。

 

(2) 占有説

奪取罪の保護法益は、単なる占有それ自体であるとする。

 

(3) 本権説と占有説の差異

例えば、甲が乙にかばんをひったくられた際に、追いかけて乙から奪い返したような場合である。

占有説

たとえ自分の物とはいえ、一応泥棒にも占有権が認められることから、甲の行為は奪取罪(窃盗、恐喝等)が成立することになる。もっとも、この事例の場合、自救行為として違法性が阻却されると犯罪とはならない。

本権説

被害者である泥棒に本権はないことから、そもそも甲に奪取罪は成立しない。