- 刑法(各論)ー6.財産に対する罪
- 6.財産罪の保護法益
- 財産罪の保護法益
- Sec.1
1財産罪の保護法益
■財産罪の保護法益
財産罪の保護法益については、財物に対する所有権その他の権利(賃借権等)であると考える「本権説」と、単なる事実上の支配、すなわち占有と考える「占有説」がある。
(1) 本権説
奪取罪の保護法益は、所有権その他の本権であるとする。
(2) 占有説
奪取罪の保護法益は、単なる占有それ自体であるとする。
(3) 本権説と占有説の差異
例えば、甲が乙にかばんをひったくられた際に、追いかけて乙から奪い返したような場合である。
① 占有説
たとえ自分の物とはいえ、一応泥棒にも占有権が認められることから、甲の行為は奪取罪(窃盗、恐喝等)が成立することになる。もっとも、この事例の場合、自救行為として違法性が阻却されると犯罪とはならない。
② 本権説
被害者である泥棒に本権はないことから、そもそも甲に奪取罪は成立しない。