• 刑法(各論)ー6.財産に対する罪
  • 3.財産犯の客体
  • 財産犯の客体
  • Sec.1

1財産犯の客体

堀川 寿和2022/02/10 12:25

財産犯の客体には、「財物」と「財産上の利益」に分類することができる。

 

財物

(1) 財物の意義

財物の定義については、有体物に限るとする説(有体性説)と、有対物に限らずエネルギー等の無体物も財物に含むとする説(管理可能性説)がある。判例(大M36.5.21)は、管理可能性説を採用する。したがって、電気も財物ということになる。一方、企業秘密やノウハウ等の情報は財物ではないが、それを記載した文書や記録されたフロッピーディスク等は財物である。

 

判例

(東京地S59.6.8)

 

研究所の技官が新薬に関する秘密資料を持ち出し、競争相手の製薬会社に渡してコピーをとらせた場合、窃盗罪が成立する。

情報が記載された紙を窃取したためである。

 

(2) 禁制品の財物性

麻薬や密造した酒のような禁制品は財物にあたるか否かについて、判例は財物にあたるとする。

 

判例

(最S26.8.9)

 

法律上所有が禁止されている酒税法違反の密造濁酒を窃取した場合、窃盗罪が成立する。

 

財産上の利益

財産上の利益とは、財物以外の財産的利益をいう。

例えば、債務を負担させたり、免除したり(大M43. 6.7)、延期(大M44.10. 5)させる場合のほか、労務を提供させる(キセル乗車、タクシー代金の踏み倒し等)等がこれにあたる。