- 刑法(各論)ー3.自由に対する罪
- 2.逮捕及び監禁の罪
- 逮捕及び監禁の罪
- Sec.1
1逮捕及び監禁の罪
■逮捕・監禁罪(刑法220条)
刑法220条(逮捕及び監禁)
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3年以上7年以下の懲役に処する。
(1) 構成要件
不法に人を逮捕し、又は監禁することである。身体活動の自由の拘束が継続する限り犯罪が係属することから、継続犯とされる。
① 主体
限定なし。
② 客体
人である。身体活動の自由を保護法益とすることから、身体活動の自由を有する自然人に限られ、動物や法人は本罪の客体とはならない。
③ 行為
(イ)逮捕
逮捕とは、人の身体を直接的に拘束してその身体活動の自由を奪うことをいう。有形的方法、無形的方法を問わない。
(ロ)監禁
監禁とは、人の身体を場所的に拘束して出られなくすることをいう。こちらも有形的方法、無形的方法を問わない。したがって、閉じ込めるといった有形的方法のみならず、高い木に登っている人のハシゴを外したり、入浴中の婦人の服を隠して出られなくするといった無形的方法による場合も含まれる。
(2) 刑罰
3年以上7年以下の懲役。未遂の処罰規定はない。
(3) 罪数
人を逮捕し、引き続き監禁した場合は、包括して逮捕・監禁罪の一罪が成立する。(最大S28.6.17)
傷害の目的で監禁し、傷害を与えたときは、監禁罪と傷害罪は併合罪となる。(牽連犯ではない。)
■逮捕・監禁致死傷罪(刑法221条)
刑法221条(逮捕等致死傷)
前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
(1) 構成要件
逮捕、監禁罪を犯し、よって人を死傷させたことである。
(2) 結果的加重犯
逮捕、監禁罪の結果的加重犯である。
■逮捕・監禁罪の客体(推論対策)
逮捕・監禁罪の客体は、行動の意思ないし行動能力を有する者に限られるのか、それとも限られないのかについて、次の2つの説がある。例えば、生まれて間もない赤ちゃんや睡眠中の者のように、もともと行動不可能な者を逮捕・監禁したような場合、いずれの説でも逮捕・監禁罪は成立しないが、自由に動き回れる幼児を逮捕・監禁した場合や逮捕・監禁されたが被害者がその事実に気づいていないような場合に差が出る。
(1) 現実的自由説
現実に行動の意思あるいは行動能力を欠く者は、本罪の客体とはならないとする説である。
したがって、この説によると、生まれて間もない赤ちゃんや睡眠中の者のみならず、幼児を逮捕・監禁した場合や逮捕・監禁されたが被害者がその事実に気づいていない場合にも、逮捕・監禁罪は成立しないことになる。
(2) 可能的自由説(判例)
自由に行動し得るものであれば逮捕・監禁罪の客体となるとし、行動の自由は必ずしも現実的にあることを必要とせず、その可能性があれば足りるとする説である。したがって、生まれて間もない赤ちゃんや睡眠中の者については、逮捕・監禁罪の客体とはならないが、幼児を逮捕・監禁した場合や逮捕・監禁されたが被害者がその事実に気づいていない場合には、逮捕・監禁罪は成立することになる。
判例 |
(京都地S45.10.12) |
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意思能力はなくても、はい廻ったり、壁や窓を支えにして立ち上がり、歩くことができる生後1年7月の幼児は本罪の客体となる。 |
判例 |
(広島高裁S51.9.21) |
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強姦(現強制性交等)目的を秘して、偽計を用いて被害者を自動車に乗せ、犯行現場まで疾走した場合、被害者は自己が監禁されていることを意識する必要がなく、本罪の客体となる。 |