• 刑法(各論)ー3.自由に対する罪
  • 3.性的自由に対する罪
  • 性的自由に対する罪
  • Sec.1

1性的自由に対する罪

堀川 寿和2022/02/10 12:11

強制わいせつ罪(刑法176条)

 

刑法176条(強制わいせつ)

13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

 

(1) 構成要件

13歳以上の者(男女とも)に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をする、又は13歳未満の者に対し、わいせつな行為をことである。

① 主体

限定なし。

② 客体

人である。男女を問わない。

(イ)13歳以上の男女に対する行為

暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をすること。13歳以上の男女に対しては、同意を得ている場合は、本罪の構成要件に該当しない。

(ロ)13歳未満の男女に対する行為

単にわいせつな行為をすること。したがって、暴行又は脅迫を用いなくても、本罪が成立するし、仮に13歳未満の男女の同意を得ていたとしても本罪は成立する。

③ 行為

わいせつな行為とは、判例によると、「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反すること」をいうとされている。(最S26.5.10

 

(2) 故意

行為のわいせつ性の認識のみならず、行為者の性欲を刺激・興奮又は満足させる意図で行われる必要がある。(傾向犯)

 

判例

(最S45.1.29)

 

23歳の婦人に硫酸をかけると言って脅迫し、裸にしてその立っているところを約5分間撮影する行為であっても、これらが専らその婦人に復習し又はこれを侮辱し虐待する目的に出たときは強制わいせつ罪は成立しない。

 

(3) 刑罰

6月以上10年以下の懲役。未遂の処罰規定あり。(刑法180条)

 

(4) 非親告罪

本罪又は本罪の未遂罪はこれまで親告罪とされていたが、平成29年の改正により非親告罪とされた。したがって、被害者の告訴がなくても本罪は成立し得る。

強制性交等の罪(刑法177条)

 

刑法177条(強制性交等)

13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

 

(1) 構成要件

13歳以上の者(男女とも)に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(「性交等」)をする、又は13歳未満の者に対し、性交、肛門性交又は口腔性交(「性交等」)をすることである。

① 主体

限定なし。男女を問わない。

② 客体

人である。男女を問わない

(イ)13歳以上の男女に対する行為

暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(「性交等」)をすること。13歳以上の男女に対しては、同意を得ている場合は、本罪の構成要件に該当しない。

(ロ)13歳未満の男女に対する行為

単に性交、肛門性交又は口腔性交(「性交等」)をすること。したがって、暴行又は脅迫を用いなくても、本罪が成立するし、仮に13歳未満の男女の同意を得ていたとしても本罪は成立する。

③ 行為

性交、肛門性交又は口腔性交をすることである。

 

(2) 刑罰

5年以上の有期懲役。未遂の処罰規定あり。(刑法180条)

 

(3) 非親告罪

本罪又は本罪の未遂罪は強制わいせつ罪と同様に親告罪とされていたが、平成29年の改正により非親告罪とされた。したがって、被害者の告訴がなくても本罪は成立し得る。

 

準強制わいせつ及び準強制性交等の罪(刑法178条)

 

刑法178条(準強制わいせつ及び準強制性交等)

1.人の心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、もしくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。

2.人の心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、もしくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

 

(1) 構成要件

13歳以上の者(男女とも)に対し、心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、もしくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為もしくは強制性交等をすることである。

① 主体

限定なし。

② 客体

人である。男女を問わない。

③ 行為

わいせつな行為又は性交等をすること。

 

(2) 刑罰

① 準強制わいせつ罪

6月以上10年以下の懲役。未遂の処罰規定あり。(刑法180条)

② 準強制性交等の罪

5年以上の有期懲役。未遂の処罰規定あり。(刑法180条)

 

(3) 非親告罪

本罪又は本罪の未遂罪も平成29年の改正により非親告罪とされた。したがって、被害者の告訴がなくても本罪は成立し得る。