• 刑法(各論)ー3.自由に対する罪
  • 1.脅迫の罪
  • 脅迫の罪
  • Sec.1

1脅迫の罪

堀川 寿和2022/02/10 12:08

脅迫に関する罪の種類

脅迫に関する罪は、具体的には脅迫罪(刑法222条)強要罪(刑法223条)に分類することができる。

脅迫罪(刑法222条)

 

刑法222条(脅迫)

1.生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

2.親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

 

(1) 構成要件

本人又はその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫すること。

① 主体

限定なし。

② 客体

被害者本人か親族に対するものに限られる。したがって、例えば、内縁の配偶者や恋人、同僚に対する加害の告知の場合、脅迫罪とはならない。

③ 行為

相手方又はその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫することである。告知の方法に制限はないため、口頭による場合はもちろん、書面やメール等による場合も加害の告知となり得る。

 

(2) 刑罰

2年以上の懲役又は30万円以下の罰金。

未遂の処罰規定はない。したがって、加害の告知をしたが、それが相手方に伝わらなかった場合は、処罰されない。

 

 

 

強要罪

 

刑法223条(強要)

1.生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫し、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。

2.親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。

3.前2項の罪の未遂は罰する。

 

(1) 構成要件

本人又はその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて(本人に対するものに限る)、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害すること。

① 主体

限定なし。

② 客体

被害者本人か親族に対するものに限られる。脅迫罪と同様である。

③ 行為

本人又はその親族に対する加害の告知をして脅迫し、又は暴行を用いて(本人に対するものに限り、親族に対する場合は除く。)を用いて、人をして義務なきことを行わせ、又は行うべき権利を妨害すること。

 

(2) 刑罰

3年以上の懲役。未遂も罰する。(刑法223条3項)

 

(3) 罪数

恐喝罪、強盗罪、強制性交等、逮捕監禁罪、職務強要等の罪が成立する場合には、本罪の適用は廃除される。(法条競合)