- 刑法(各論)ー2.生命•身体に対する罪
- 1.人の意義
- 人の意義
- Sec.1
1人の意義
■人の意義
(1) 刑法における人の意義
生命•身体に対する罪の客体は人である。ただ、堕胎の罪の客体は胎児が客体とされている。このことから刑法では、人と胎児を区別する基準が重要となる。また、人が死亡すると生命•身体に対する罪の客体ではなくなることから、人の死亡の時期の判定の基準も重要である。
① 胎児
堕胎罪の客体
② 人
殺人罪や傷害罪に客体
③ 死体
死体遺棄罪、死体損壊罪の客体
(2) 人の始期
「陣痛説(分娩開始説)」「一部露出説」「全部露出説」「独立呼吸説」等諸説あるが、刑法では、「一部露出説」が判例(大T8.12.13)・通説である。母体から一部でも出た時点で、第三者の攻撃が可能であることから、傷害罪や殺人罪の客体となり得るからである。
(3) 人の終期
人の終期は死亡である。何をもって死と定義するかについても諸説あるが、判例(大阪地判H5.7.9)は、呼吸・脈拍の不可逆的停止及び瞳孔拡散の3徴候を基礎として、総合的に判断するとしている。