- 刑法(総論)ー9.共犯論
- 10.結果的加重犯と共犯
- 結果的加重犯と共犯
- Sec.1
1結果的加重犯と共犯
■結果的加重犯と共犯
(1) 意義
結果的加重犯の場合、基本犯について共同実行の意思があれば、実際に生じた重い結果について共同の認識がなくても共同正犯の成立を認めてよいかの問題である。肯定説と否定説の両方があるが、判例は肯定説に立つ。
判例 |
(最S26.3.27) |
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甲・乙が強盗を共謀し、甲が丙を脅かしている間に乙が金品を窃取したが、甲が丙に傷を負わせてしまった場合、甲のみならず乙も強盗傷人罪の共同正犯となる。 |
判例 |
(最S23.11.4) |
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強盗共謀者中の1人が実行行為の途中から殺意を生じて人を殺害したときは、殺意のなかった他の共謀者も強盗致死罪の共同正犯の罪責を負う。 |
実際に殺害行為をおこなった共犯者は、結果的加重犯にとどまらず強盗殺人罪が成立する。
(2) 結果的加重犯と教唆犯・幇助犯
基本犯を教唆したところ、被教唆者が結果的加重犯を引き起こしたような場合である。例えば、窃盗の教唆をしたところ、被教唆者が強盗をした場合である。
判例は、基本犯を教唆している以上、それと結果との間に条件関係が認められる限り、結果的加重犯の教唆犯が成立するとし、基本犯を幇助した場合の結果的加重犯の従犯の場合も同じ理屈となる。
(教唆犯の事例)
判例 |
(大T13.4.29) |
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暴行を教唆したところ、被教唆者が暴行を加え、その結果、被害者の身体を傷害し、よって死に至らしめたときは、教唆者は傷害致死の罪責を負う。 |
(従犯の事例)
判例 |
(最S25.10.10) |
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傷害の幇助の意思で短刀を貸与したところ、正犯がそれで殺人を犯したときは、傷害致死罪の幇助犯が成立する。 |