- 刑法(総論)ー9.共犯論
- 11.共犯と中止犯
- 共犯と中止犯
- Sec.1
1共犯と中止犯
■共犯と中止犯
(1) 共同正犯の中止犯
① 共犯者全員が犯行を中止した場合
(イ)共犯者全員が任意に犯行を中止した場合
全員が中止犯となる。
(ロ)共同者の一部が任意に他の共同者の実行を阻止し、結果発生を阻止した場合
この場合、一部の者の中止行為によって結果発生か阻止されたときは、その者にては中止犯が成立するが、他の共犯者は障害未遂であるにすぎない。(大T12.7.2)例えば、AはBと共同してCを殺害することを決意し、A・Bともに実行に着手したが、Aが後悔して殺人を思い止まり、Bを説得したところ、Bは自分1人ではCの殺害が無理だと思ってAの説得に応じたような場合である。
中止者に中止犯の規定が適用されるためには、その者が犯行を止だけでは足りず、他の共同者の実行を阻止し、結果の発生を阻止する必要がある。
② 共犯者の一部が任意に犯行を中止したが、他の共犯者の行為によって結果が発生した場合
共同者の一部が任意に犯行を中止しても、他の者が犯罪を実現してしまったときは、中止した者についても中止犯を認めることはできない。(大T12.7.2)したがって、全員が既遂の共同正犯となる。
例えば、AはBとの間でCを脅して現金を強奪する計画を立て、その計画どおりBと一緒にCをピストルで脅したところ、Cがおびえているのを哀れに思い現金を奪うことを思いとどまり、その場にいたBに何も言わず立ち去ったが、Bが引き続き現金を奪った場合、Aに中止犯は成立せず、強盗罪の共同正犯となる。
(2) 教唆犯、幇助犯の中止犯
① 共犯の中止犯
教唆犯や幇助犯については、教唆者や幇助者が自己の意思で正犯の犯罪の完成を阻止した場合に、この教唆者や幇助者につき中止未遂が成立する。この場合の正犯は障害未遂となる。例えば、AはBにCを騙して金をとることを教唆し、BがCを騙したが、その後AはCに申し訳なく思い真実を告げたことから、詐欺は未遂に終わった。この場合、Aは教唆の中止未遂となるがBは障害未遂にとどまる。
② 正犯の中止犯
逆に、正犯が自己の意思で任意に実行を中止した場合には、この正犯について中止犯が成立し、それが教唆者や幇助者にとって意外な結果であるときは、それらの者は障害未遂となる。例えば、AがCの殺害をBに依頼し、Bがこれを承諾してCを海中に突き落としたが、もがく姿を見て急に憐憫の情をいだきCを救い出しその命をとりとめた。この場合、Bは殺人の中止犯となるが、Aは障害未遂にすぎない。