- 刑法(総論)ー8.未遂論
- 1.犯罪実現の過程
- 犯罪実現の過程
- Sec.1
1犯罪実現の過程
■犯罪実現の過程
犯罪行為は通常、次のような時間的経過をたどる。
(1) 決意
犯罪行為を行おうとする決意である。決意だけでは犯罪にはならない。
(2) 陰謀
陰謀とは、2人以上の者が、一定の犯罪行為を実行することについて、相談し合意に達することをいう。陰謀のみでは処罰されないのが原則であるが、一定の事前抑止の要請が強い犯罪類型についてのみ、例外的に処罰規定が置かれている。
(3) 予備
予備とは、犯罪を実現するためにする準備行為であって、実行の着手に未だ至らない場合をいう。
陰謀の場合と同様に、予備のみでは処罰されないのが原則であるが、一定の事前抑止の要請が強い犯罪類型についてのみ、例外的に処罰規定が置かれている。
陰謀の処罰規定がある犯罪 |
予備の処罰規定がある犯罪 |
1.内乱罪(刑法78条) 2.外患罪(刑法88条) 3.私戦陰謀罪(刑法93条) |
1.内乱罪(刑法78条) 2.外患罪(刑法88条) 3.私戦予備罪(刑法93条) 4.放火罪(刑法113条) 5.通貨偽造罪(刑法153条) 6.支払用カード電磁的記録不正作出罪 (刑法163条の4) 7.殺人罪(刑法199条) 8.身代金目的略取罪(刑法228条の3) 9.強盗罪(刑法237条) |
(4) 実行の着手
構成要件に該当する行為を開始した場合である。実行の着手時期がいつになるかについて、判例は、法益侵害の現実的危険性を生じさせる行為が開始されたときであるとする。
(5) 実行の終了
実行行為が終了した場合である。