- 刑法(総論)ー7.責任論
- 6.過失
- 過失
- Sec.1
1過失
■過失の意義
(1) 意義
過失とは、注意義務違反によって犯罪事実を認識又は認容しない場合である。つまり故意がない場合である。
(2) 過失犯の処罰
刑法は、過失による行為は原則として処罰せず、特別の規定がある場合に限って処罰することとしている。(刑法38条1項)特別の規定としては、過失傷害罪(刑法209条)や過失致死罪(刑法210条)等がある。
■過失の種類
(1) 認識ある過失と認識なき過失
① 認識ある過失
犯罪事実は認識したが、結果発生を認容しなかった場合である。
② 認識なき過失
犯罪事実を全く認識しなかった場合である。
(2) 通常の過失と業務上過失
① 通常の過失
通常、過失というとこの通常の過失をさす。
② 業務上過失
業務上過失とは、行為者が業務上必要な注意を怠ったことによって、犯罪事実を発生させた場合である。ここでいう業務とは、社会生活上の地位に基づき反復継続して行う事務をいう。業務とは、通常、仕事のことをさすが、ここでいう業務はそれより広い意味でとらえる。したがって、反復継続して車を運転することが予定される場合には、仕事でなくても業務となる。
(ex)業務上失火罪(刑法117条の2)、業務上過失致死傷罪(刑法211条)
(3) 軽過失と重過失
① 軽過失
通常の過失のことである。
② 重過失
通常の過失に対して、行為者の注意義務違反の程度が著しい過失である。わずかな注意で結果が予見でき、かつ結果の発生を容易に回避することができたにもかかわらず、これを怠って注意義務に違反したような場合である。