• 刑法(総論)ー6.違法論
  • 7.自救行為
  • 自救行為
  • Sec.1

1自救行為

堀川 寿和2022/02/10 10:23

自救行為

(1) 自救行為の意義

自救行為とは、権利を侵害された者が、法律上の正規の手続による救済を待っていたのでは権利の回復が不可能ないし著しく困難となる場合に、自力でこれを回復する行為をいう。自力救済ともいう。例えば、被害者が窃盗犯から取られたものを取り戻すような場合である。

 

(2) 自救行為の要件

自救行為が成立するには、次の要件を満たす必要がある。

・自己の権利が不法に侵害されたこと

・自力による救済を必要とする緊急な事情が存在すること

・行為が相当性を有すること

・自救の意思があること

 

① 法益侵害の存在

自救行為は過去の侵害についてのみ成立する。現在の侵害の場合には、正当防衛の問題である。

② 緊急な事情の存在

国家機関による法的救済を受ける余裕がなく、ただちに自力による救済をしなければ回復が事実上不可能になるか又は著しく困難となるおそれがある状態にあることが必要である。

③ 侵害行為の相当性

自救行為は、侵害回復のために必要であり相当なものであることを要する。補充性・法益の権衡が要求されるが、自救行為は「正対不正」の関係に立つところから、緊急避難と程度の厳格性は要求されず、正当防衛に準じた行為の相当性があれば足りる。

 

(3) 自給行為の効果

自救行為が認められれば、違法性が阻却され犯罪が不成立となる。