- 供託法ー16.執行供託
- 8.仮差押えの執行と滞納処分が競合した場合の供託
- 仮差押えの執行と滞納処分が競合した場合の供託
- Sec.1
1仮差押えの執行と滞納処分が競合した場合の供託
■仮差押えの執行と滞納処分が競合した場合の供託
滞納処分は、仮差押えの執行がなされている債権に対してもすることができる(国徴法140条)。また仮差押命令も滞納処分による差押えがなされている債権に対して発することも可能である(滞調法20条の9第1項、20の条3第1項)。
(1) 競合する場合
① 徴収職員による取立て
滞納処分は仮差押えによりその執行を妨げられない(国徴法140条)とされているため、仮差押えと滞納処分とは、その先後を問わず徴収職員は取立てをすることができる。
② 権利供託
第三債務者は仮差押えと滞納処分とが競合したときは、その先後を問わず、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる(滞調法20条の9、36条の12、20条の6)。また、第三債務者は、滞納処分による差押部分は徴収職員の取立てに応じて支払い、残部を供託することもできる(民保法50条5項、民執法156条1項)。仮差押では、取立てができないから仮差押債権者に先に債権回収されてしまう危険がないため、権利供託としている。
③ 供託手続
この供託は、仮差押えの執行のみがなされた場合と同様に執行供託の類型となるが、債務者(滞納者)Aを被供託者とする弁済供託に類するものとされ、したがつて、供託書には債務者Aを被供託者として記載し、供託通知書の発送を請求する場合は、被供託者宛ての郵券を貼った封筒を貼付しなければならない(昭55.9.6民四5333号)。
④ 供託金払渡手続
a) 事情届
第三債務者がこの供託をしたときは、供託書正本を添付して、徴収職員等に対して事情届を出さなければならない(滞調法20条の9第1項、20条の6第2項)。徴収職員等がこの事情届を受けたときは、その旨を執行裁判所に通知しなければならない(滞調法20条の9第1項、20条の6第3項)。
b) 供託金の払渡し
供託金のうち滞納処分による差押え部分については、徴収職員等の還付請求によって払い渡す。
残余の部分については、仮差押債権者の本執行による差押えまたは他の債権者の強制執行による差押えがなされたときに、執行裁判所の配当の実施としてする支払委託に基づいて払い渡す(昭55.9.6民四5333号)。
(2) 競合しない場合
債権の一部につき滞納処分による差押えがなされている場合において、残余の範囲内で仮差押えの執行がなされた場合、滞納処分による差押部分については競合していないため、第三債務者は滞調法による供託が認められず、徴収職員等の取立てに応じて支払わなければならない(国徴法67条)。
残余の部分については、民保法50条5項、民執156条1項による供託ができる。