- 供託法ー16.執行供託
- 9.混合供託
- 混合供託
- Sec.1
1混合供託
■混合供託
(1) 混合供託の意義
① 意義
混合供託とは、弁済供託と執行供託を同一の供託書によってする供託である。
たとえば、AからBに債権譲渡の通知があったが、A・C間で債権譲渡につき争いがある場合、Bは債権者不確知を理由に弁済供託することができる(民法494条)。
上記の事例でAまたはCを債務者とする差押えがBに送達された場合、第三債務者Bは、民法494条と民執156条1項の規定を根拠として供託することができる(昭41.11.28民甲3264号)。Dの差押えとEの差押えとがなされ、差押えが競合したときは、民法494条と民執156条2項を根拠として供託することが認められる。
② 趣旨
供託を認めなければ、仮にBがCを被供託者として弁済供託をした場合、譲渡が有効でCが債権者となれば問題ないが、譲渡無効であるとされたときは、供託による弁済を差押債権者Dに対抗できず、Bは二重私いさせられるリスクがある。また、Aを被供託者として弁済供託した後に、譲渡が有効と確定したときは、BはCへ弁済する必要があり、こちらも二重弁済のリスクがある。そこで、第三債務者Bを保護するために、譲渡が有効・無効いずれに確定してもよいように認められたのが混合供託である。債権譲渡が有効であれば弁済供託としての効力を認め、無効であれば執行供託としての効力を認めるものであって、一種の条件付供託である。
(2) 供託手続
① 管轄供託所
弁済供託は、債務履行地の供託所に行う(民法495条1項)。したがって、AまたはCの住所地の供託所が原則であり、執行供託も債務履行地の供託所であって、通常はAの住所地の供託所となる。したがって、この場合の供託所は両供託に共通であるAの住所地(またはもより)の供託所が管轄供託所となると解される。
② 供託書
混合供託の供託書には、被供託者としてAまたはCと記載し、差押債権者DおよびEの記載は要しない。執行供託において差押債権者を被供託者として記載しないからである。
また、供託の根拠条項として、民法494条と民事執行法156条1項または2項を併記する。
(3) 供託金の払渡手続
① 債権譲渡が有効と確定した場合
その後、債権譲渡の有効または無効の問題について決着がつき、Cが債権者と確定したときは、DおよびEの差押えは無効となり、Cのみが債権者として供託所から直接還付を受けることができる。
② 債権譲渡が無効と確定した場合
DおよびEの差押えは有効であり、供託は執行供託となるため、その後は執行裁判所の配当等の実施としての支払委託に基づいて供託金は払い渡されることになる。