- 供託法ー2.供託の有効要件
- 4.供託物の適格性
- 供託物の適格性
- Sec.1
1供託物の適格性
■供託物の適格性
(1) 供託の目的物
供託の目的物は供託に適する物でなければならない。供託に適するものとは、金銭・有価証券・
その他の物(動産・不動産)である。
① 金銭
ここでいう金銭とは、日本の通貨をさし、外国の通貨は含まれていない。外国の通貨を供託する場合には、その他の物として供託することになる。
② 有価証券
有価証券とは、国債、地方債、株券、社債券等のように財産権を表章する証券であって、当該権利行使にその占有を必要とするものをいう。有価証券のすべてが供託の目的物としてなるわけではなく、供託根拠法令によって供託有価証券の種類が制限されることがある。たとえば、選挙供託の場合は、供託できる有価証券は国債(振替国債を含む)に限られ、営業保証供託の場合も営業の種類(宅建業、旅行業等)ごとに供託できる有価証券の種類が定められている。
③ 振替国債
振替国債とは、社債、株式等の振替に関する法律の適用を受けるものとして、財務大臣が指定した国債で振替機関が取り扱うものをいう。この権利の帰属は、原則として振替口座薄の記載または記録により定まる。振替国債ついては、国債証券を発行することはできない。つまり国債証券が発行されず、振替によって流通する国債であり振替国債を供託する場合には証券の提出に代えて供託所の口座へ振替手続きをすることになる。詳しくは、後述する。振替国債による供託は、法令の規定により担保もしくは保証としてまたは公職選挙法の規定により供託する場合に行うことができる。弁済供託として振替国債を供託することはできない。
④ 動産
動産も供託物となる。しかし、危険物であったり、野菜や鮮魚類などのように滅失・損傷のおそれがあったり、過分の保存費を要するものであるときは、供託者は裁判所の許可を得てこれを売却し、その代価を供託することになる。
⑤ 不動産
弁済供託において、弁済の目的物が不動産であれば供託することができる。
(2) 供託の種類ごとの供託物
① 弁済供託
弁済供託の目的物は、弁済すべき物である。金銭債務の場合の供託の目的物は金銭であり、物の給付債務の場合の供託の目的物は、その給付義務を負う目的物が供託の目的物となる。したがって、特定の有価証券が弁済の目的物である場合には、その有価証券が供託物である。
② 営業保証供託
営業保証供託では、それぞれの業法で金銭のほか、供託物として有価証券を供託することが認められている場合に限りすることができる。宅建業法、旅行業法などは有価証券による供託を認めるが、いずれも供託できる有価証券の種類を定めており、認めない証券もある。
宅建業法25条3項
宅地建物取引業者の営業保証金は、国債証券、地方債証券その他国土交通省令で定める有価証券をもってこれに充てることができる。
旅行業法施行規則8条
旅行業法8条6項の国土交通省令で定める有価証券は、次に掲げるものとする。
1. 国債証券
2. 地方債証券
3. 特別の法律により法人が発行する債券
4. (記載省略)
③ 裁判上の担保(保証)供託
裁判上の担保(保証)供託では、金銭のほか、裁判所が相当と認める有価証券を供託することができる(民訴法76条、民執法15条1項、民保法4条1項等)。有価証券の種類については、特に制限はない。保全命令に係る担保供託は、金銭または担保を立てるべきことを命じた裁判所が相当と認める有価証券を供託する方法によるが、ここでいう有価証券には振替国債も含まれる。
④ 執行供託
執行供託については、その性質上原則として金銭に限られる。ただし、一部有価証券による供託を認める例外もある(民執法117条5項)。
⑤ 仮差押え解放金の供託
金銭に限られ、有価証券による供託は認められない(昭42全国会決議)。
⑥ 没取供託
金銭の他、有価証券による供託も可能であるが、有価証券は国債に限られる(公選法92条1項)。