- 民事保全法ー6.仮処分の効力
- 2.不動産に関する所有権以外の権利についての登記又は登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分
- 不動産に関する所有権以外の権利についての登記又は登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分
- Sec.1
1不動産に関する所有権以外の権利についての登記又は登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分
■不動産に関する所有権以外の権利についての登記又は登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分ー1
(1) 相対的効力
この場合、前述のとおり処分禁止の登記とともに、仮処分による仮登記(保全仮登記)をする方法により行う(民保法53条2項)。
A所有の甲土地を目的としてBのために抵当権設定契約をしたがAが登記手続に
協力しなかったため、抵当権設定登記請求権を保全するためにBの申立てによって
裁判所はAに対して甲土地の処分を禁ずる仮処分命令をした。
【甲区】
1 |
所有権保存
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所有者 A ① |
2 |
処分禁止の仮処分 (乙区1番保全仮登記) |
債権者 B ② |
【乙区】
1 |
抵当権設定保全仮登記 (甲区2番仮処分) |
原因 年月日金銭消費貸借年月日設定 債権額 金○○○万円 利息 年何% 損害金 年何% 債務者 A 抵当権者 B |
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(2) 順位保全効
① 原則
民保法53条2項の仮処分の権利者(処分禁止の登記とともに保全仮登記をした債権者)が保全すべき登記請求権に係る登記をするには、保全仮登記に基づく本登記をする方法による(民保法58条3項)。保全仮登記に基づいて本登記をした場合は、当該本登記の順位は、当該保全仮登記の順位による(不登法112条)。仮処分債権者が本案訴訟の勝訴判決に基づき単独で、又は債務者との共同申請により本登記をする場合、処分禁止登記後の所有権移転登記や抵当権設定登記は抹消されることはない。これら権利は保全仮登記の権利の負担付の所有権、劣後する抵当権として存続できるからである(民保法58条2項カッコ書)。
【甲区】
1 |
所有権保存
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所有者 A ① |
2 |
処分禁止の仮処分 (乙区1番保全仮登記) |
債権者 B ② |
3 |
所有権移転
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所有者 C ③ |
【乙区】
1 |
抵当権設定保全仮登記 (甲区2番仮処分) |
原因 年月日金銭消費貸借年月日設定 ② 債権額 金○○○万円 利息 年何% 損害金 年何% 債務者 A 抵当権者 B |
抵当権設定 |
原因 年月日金銭消費貸借年月日設定 ⑤ 債権額 金○○○万円 利息 年何% 損害金 年何% 債務者 A 抵当権者 B |
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2 |
抵当権設定 |
原因 年月日金銭消費貸借年月日設定 ④ 債権額 金○○○万円 利息 年何% 損害金 年何% 債務者 A 抵当権者 D |
② 例外
民保法53条2項の仮処分の債権者は、同法58条3項の規定により登記をする場合(保全仮登記の本登記)において、その仮処分により保全すべき登記請求権に係る権利が不動産の使用又は収益をするものであるときは、不動産の使用もしくは収益をする権利(所有権を除く)又はその権利を目的とする権利の取得に関する登記で同条1項の処分禁止の登記に後れるものを抹消することができる(民保法58条4項)。不動産の使用・収益を目的とする権利を保全するための処分禁止の仮処分の後に登記された使用・収益を目的とする権利の登記は、仮処分の被保全権利と両立することができないためである。この規定により登記を抹消するためには、あらかじめ、その登記の権利者に対し、その旨を通知しなければならない(民保法59条1項)。この通知は、これを発する時の権利者の登記簿上の住所又は事務所にあてて発することができる。この場合には、その通知は、遅くとも、これを発した日から1週間を経過した時に到達したものとみなす(同条2項)。
【甲区】
1 |
所有権保存
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所有者 A |
2 |
処分禁止の仮処分 (乙区1番保全仮登記) |
債権者 B |
【乙区】
1 |
地上権設定保全仮登記 (甲区2番仮処分)
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原因 年月日設定 目的 建物所有 存続期間 ○○年間 地代 1㎡あたり年何年 支払期 毎年末日 債権者B |
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2 |
地上権設定 |
原因 年月日設定 地上権者C |
(3) 処分禁止の登記の抹消
登記官は、この本登記をしたときは、保全仮登記とともになした処分禁止の登記を抹消する(不登法114条)。
目的達成により不要もはや不要であることが明らかだからである。この場合も、乙区になされた保全仮登記については抹消されない。
【甲区】
1 |
所有権保存 |
所有者 A |
2 |
処分禁止の仮処分 (乙区1番保全仮登記) |
債権者 B |
3 |
所有権移転 |
所有者 C |
4 |
2番仮処分登記抹消 |
仮処分の目的達成により年月日登記 |
■不動産に関する所有権以外の権利についての登記又は登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分ー2
【乙区】
1 |
地上権設定保全仮登記 (甲区2番仮処分)
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原因 年月日設定 目的 建物所有 存続期間 ○○年間 地代 1㎡あたり年何年 支払期 毎年末日 債権者B |
地上権設定 |
原因 年月日設定 地上権者B |
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2 |
地上権設定 |
地上権者D |
【甲区】
1 |
所有権保存
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所有者 A ① |
2 |
処分禁止の仮処分 (乙区1番保全仮登記) |
債権者 B ② |
3 |
所有権移転
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所有者 C ③ |
4 |
2番仮処分登記抹消 |
仮処分の目的達成により年月日登記 ⑤ |
【乙区】
1 |
抵当権設定保全仮登記 (甲区2番仮処分) |
原因 年月日金銭消費貸借年月日設定 ② 債権額 金○○○万円 利息 年何% 損害金 年何% 債務者 A 抵当権者 B |
抵当権設定 |
原因 年月日金銭消費貸借年月日設定 債権額 金○○○万円 利息 年何% 損害金 年何% 債務者 A 抵当権者 B |
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2 |
抵当権設定 |
原因 年月日金銭消費貸借年月日設定 ④ 債権額 金○○○万円 利息 年何% 損害金 年何% 債務者 A 抵当権者 D |