- 宅建業法ー9.8種制限
- 3.手付金等の保全措置
- 保全の必要性
- Sec.1
1保全の必要性
■保全の必要性
不動産の売買には、契約成立と同時に「手付金」が支払われる場合が多い。
手付金は、契約が滞りなく進めば、そのまま代金の一部とされる。しかし、宅建業者が破産をした場合は、売買の目的物は銀行などに差し押さえられ、手に入らなくなる。そればかりか、交付した手付金も返ってこないことになり、買主にとって酷な結果となりかねない。
そこで、万が一の場合を考えて、交付した手付金等について、その返還請求権が発生した場合に、銀行等に連帯保証をしてもらうなど、その返還を確実にする手段が「手付金等の保全」である。
①原則…宅建業者は、自ら売主となる売買契約においては、手付金等の保全措置を講じた後でなくては、手付金等を受領してはならない。
②例外…次の場合は保全しなくてよい。 (a) 売買された物件について買主へ移転登記されるか、又は買主が所有権の登記をしたとき (b) 受領しようとする手付金等の額が(すでに受領した手付金等の額と合わせて)、 i) 未完成物件にあっては、代金額の5%以下で、かつ、1,000万円以下のとき ii) 完成物件にあっては、代金額の10%以下で、かつ、1,000万円以下のとき |
例外の(a)は、買主に登記が移転、もしくは買主自身が登記をすることによって、誰に対しても所有権を対抗できるようになるからである。例外の(b)は、交付する手付金等が、代金額に比べ僅少なため、保全措置をとるまでのことはないとしたものである。
保全が必要となる「%」の数字は未完成物件のほうが厳しい。未完成物件の方が完成物件の場合と比べてより危険だからである。
Point1 手付金「等」が示すとおり、これは「代金の全部又は一部として授受される金銭及び手付金その他の名義をもって授受される金銭で代金に充当されるものであって、契約の締結の日以後引渡しの前に支払われるもの」を指す。
Point2 工事が完了しているか否かについては、売買契約時において判断すべきである。また、工事の完了とは、単に外観上の工事のみならず内装等の工事が完了しており、居住が可能である状態を指す。
■手付金等の保全方法
① 保全措置の方法
② 買主は、業者が、保全措置が必要であるにもかかわらず保全しない場合は、手付金等の支払いを拒絶できる。 |
未完成物件については、「保管」の方法が使えない点に注意。
「銀行等による連帯保証」とは、宅建業者が、銀行・その他の金融機関との間で、将来生じるかもしれない「手付金等の返還債務」について連帯保証人となってもらう契約を結ぶものである。
「保険事業者による保証保険」とは、宅建業者が、将来生じるかもしれない「手付金等の返還債務」について、保険事業者の保険に加入するものである。
「指定保管機関による保管」とは、宅建業者が、あらかじめ国土交通大臣が指定する保管機関(保証協会など)との間に、手付金を保管してもらう契約(寄託契約)をしておき、実際に「手付金等の返還債務」が発生した場合に、その保管機関から返還してもらうものである。