- 民事保全法ー5.保全執行に関する手続
- 2.仮差押えの執行
- 仮差押えの執行
- Sec.1
1仮差押えの執行
■仮差押えの執行
(1) 仮差押えの執行の種類
仮差押えの執行については、原則として強制執行の差押えに関する規定が準用される。したがって、次のように執行の目的財産ごとに執行方法は異なる。なお、仮差押えは金銭債権の将来の強制執行の保全が目的であるため、執行の目的物を差押えて、債務者の処分を禁止しておけばよく、換価、満足へ進むことはない。
① 不動産に対する仮差押え(民保法47条) ② 船舶に対する仮差押え(民保法48条) ③ 動産に対する仮差押え(民保法49条) ④ 債権その他の財産権に対する仮差押え(民保法50条) |
(2) 不動産に対する仮差押えの執行
① 仮差押えの執行方法
民執法43条1項に規定する不動産(同条2の規定により不動産とみなされるものを含む)に対する仮差押えの執行は、次のいずれかの方法により行う(民保法47条1項)。
② 仮差押えの登記をする方法
a) 管轄裁判所
仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行については、仮差押命令を発した裁判所が、保全執行裁判所として管轄する(民保法47条2項)。仮差押えの登記は、裁判所書記官が嘱託する(同条3項)。不動産所在地を管轄する地方裁判所ではない。
cf 不動産に対する強制執行の管轄裁判所は不動産所在地を管轄する地方裁判所であった点と比較!
b) 民事執行法の準用
仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行については、民事執行法の不動産の強制競売における差押えの規定が準用される(民保法47条5項、民執法46条2項、同47条1項、同48条2項、同53条、同54条)。ただし、民事保全法47条5項は民事執行法46条1項の規定を準用していないため、仮差押えの登記をする方法による不動産の仮差押えの執行は仮差押えの登記がなされたときに生ずる。仮差押命令正本が債務者に送達されたときではない。
cf 不動産の強制競売開始決定による差押えの効力が発生するのは、強制競売の開始決定が債務者に送達された時か差押えの登記がされた時、いずれか早い時に生じる点と比較。
③ 強制管理の方法
a) 管轄裁判所
不動産所在地の地方裁判所が保全執行裁判所として管轄する(民保法47条5項、民執法44条)。
b) 民事執行法の準用
強制管理の方法による仮差押えの執行については、不動産の強制管理の規定が準用される(民保法47条5項)。賃料などの収益の取立て、換価などの手続は、民執法における強制管理の場合と同様である。
c) 収益金等の供託
仮差押えは配当等の手続に進まないため、強制管理の方法による仮差押えの執行においては、管理人は民執法107条1項の規定により計算した配当等に充てるべき金銭を供託し、その事情を保全執行裁判所に届け出なければならない(民保法47条4項)。仮差押債権者は本案で勝訴したら、この供託金から配当を受けることになる。
(3) 動産に対する仮差押えの執行
① 執行の方法
動産執行と同じく、動産に対する仮差押えの執行は、執行官が目的物を占有する方法により行う(民保法49条1項)。動産の仮差押命令においても目的物は特定されないため、差押えの対象となる動産は執行官が選択する。配当等の手続は行われないため、仮差押えをした金銭や仮差押えをした手形、小切手等を提示して支払を受けた金銭については執行官はこれを供託しなければならない(民保法49条2項)。
② 売得金の供託
仮差押えの執行に係る動産について著しい価額の減少を生ずるおそれがあるとき、又はその保管のために不相応な費用を要するときは、執行官は民事執行法の規定による動産執行の売却の手続によりこれを売却し、その売得金を供託しなければならない(民保法49条3項)。
本来、仮差押えにおいては換価の手続までは進行しないのが原則であるが、仮差押えの目的物が腐敗や変質のおそれがある物である場合や保管に要する費用が高額である物である場合には、そのまま保管するのは妥当でないので、売却を経て売得金を供託することにより、仮差押えの目的物の代替とするものである。
③ 民事執行法の準用
動産に対する仮差押えの執行については、動産執行に関する規定が準用される(民執法123条〜129条、131条、132条、136条)執。行官は他の債権者が既に差押えや仮差押えの執行をした動産に対して二重に仮差押えの執行をすることはできない(民保法49条4項、民執法125条)。
なお、執行の申立て自体は認められ、事件の併合が行われる(民保法49条4項、民執法125条2項)。
(4) 債権その他の財産権に対する仮差押えの執行
① 執行の方法
民執法143条に規定する債権に対する仮差押えの執行は、保全執行裁判所が、第三債務者に対し債務者への弁済を禁止する命令を発する方法により行う(民保法50条1項)。その他の財産に対する仮差押えの執行も同様である(同条4項)。
cf 債権に対する差押えの執行は執行裁判所が債務者に対して債権の取立てその他の処分を禁止し、かつ第三債務者に対し弁済を禁止する方法による点と比較(民執法145条)。
② 管轄
仮差押えの執行については、仮差押命令を発した裁判所が、保全執行裁判所として管轄する(民保法50条2項)。その他の財産に対する仮差押えの執行も同様である(同条4項)。
③ 仮差押えの効力発生
この弁済禁止命令が第三債務者に送達された時に仮差押えの効力が生ずる(民保法50条5項、民執法145条5項)。
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仮差押えの効力発生時期 |
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不 動産 |
仮差押登記による方法 |
仮差押え登記の時(民保法47条5項、民執法46条1項は準用されない。)(*1) |
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強制管理の方法 |
(原則)強制管理開始決定が債務者に送達された時 (例外)送達前に差押登記がなされたときは登記の時(民保法47条5項、民執法46条1項) |
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動産仮差押え |
執行官が目的物を占有した時(民保法49条1項) |
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債権仮差押え |
仮差押命令正本が第三債務者に送達された時(民保法50条5項、民執法145条5項) |
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(*1)強制競売や強制管理による差押の効力発生時期は、開始決定が債務者に送達された時又は差押えの登記のいずれか早いときであった点と比較!
④ 民事執行法の準用
債権に対する仮差押えの執行についても、債権差押えの手続が準用される(民保法50条5項)。
債権執行における換価手続へ進まないだけだからである。
1. 仮差押命令は、債務者及び第三債務者を審尋しないで発する(民保法50条5項、民執法145条2項)。仮差押命令は、債務者及び第三債務者に送達しなければならない(民保法50条5項、民執法145条3項)。 2. 差押えの範囲、超過差押えの禁止(民保法50条5項、民執法146条) 3. 継続的給付の差押え(民保法50条5項、民執法151条) 4. 扶養義務等に係る定期金債権を請求する場合の特例(民保法50条5項、民執法151条の2) 5. 差押禁止債権。差押禁止債権の範囲の変更(民保法50条5項、民執法152条、153条) 6. 第三債務者の供託(民保法50条5項、民執法156条) 7. その他 |
⑤ 債権の仮差押えの効力
債権の仮差押えの執行によって、第三債務者及び債務者は処分制限の効力を受け、これに違反しても仮差押債権者に対抗できない。第三債務者に対しては弁済が禁止されるため、第三債務者がこれに反して債務者に弁済しても、重ねて弁済しなければならない(民法481条1項)。
仮差押債務者も、その債権の譲渡その他の処分や取立てが禁止される。
⑥ 第三債務者の供託
供託法において記述する。