• 宅建業法ー9.8種制限
  • 2.クーリング・オフ制度
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  • Sec.1

1クーリング・オフ制度

堀川 寿和2021/11/24 11:08

クーリング・オフ制度

 「クーリング・オフ」とは、事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回または売買契約の解除の略称である。要するに、「不動産は極めて重要な財産なのだから、十分慎重に考えて買うべきだ。もし慎重に考えられないような場所で契約した場合は、後で契約を解除できるべきだ」ということである。

 慎重に判断したのかどうかは、契約したときの実際の状況ではなく、契約の「場所」で決まることになっている。

① 宅建業者が自ら売主となる宅地建物の売買契約において、事務所等以外の場所で買受けの申込み又は売買契約を締結した者は、書面により、申込みの撤回又は契約の解除を行うことができる。
② 事務所等(クーリング・オフができない場所)とは
(a) 事務所
(b) 以下の場所で、取引士の設置義務のあるところ
i) 事務所以外で継続的に業務を行える施設
ii) 一団の宅地建物の分譲を行う場合の案内所(土地に定着するものに限る)
iii) 事務所等で宅地建物の売買契約に関する説明をした後、当該宅地建物に関し展示会その他これに類する催しを実施する場所(土地に定着するものに限る)
iv) 業者が他の業者に代理・媒介を依頼した場合の他業者の(a)及び(b)のi)~iii)の場所(土地に定着するものに限る)
(c) 買主が自ら申し出た場合の自宅又は勤務先


 申込みの撤回、又は契約の解除は、いずれも「書面」でしなければならない。書面でしないと解除等は無効である。

 「取引士の設置義務のあるところ」とは、そこで契約をしたり、契約の申込みを受けたりする場所である。取引士の設置義務があれば足り、実際に取引士がいたか、免許権者に届け出ていたか(宅建業法50条2項)は問わない。

 クーリング・オフできる場所の典型は、

1. 旅館・ホテルの一室、 2. テント張りの案内所、 3. 喫茶店・レストラン、 4. 銀行の一室である。


クーリング・オフできなくなる場合

 クーリング・オフは無理由解除制度であるため、むやみやたらに行使できるわけではなく、要件を厳格にしている。以下の事情がある場合は契約を解除できない。

事務所等で買受けの申込みをし、事務所等以外の場所で売買契約を締結した場合
② クーリング・オフできる旨を書面で告げられ、その告げられた日から8日を経過した場合
③ 申込者等が、宅地建物の引渡しを受け、かつ、代金の全部を支払ったとき


 事務所等以外の場所で「売買契約を締結した」とは、契約の「承諾」が事務所等以外でされた場合である。

 クーリング・オフにとって重要なのは、買主がどのような場所で「買いたい」という意思表示(買受けの申込み)をしたかである。したがって、買受けの申込みが、十分慎重に意思決定できる事務所等でなされれば、業者の側の「承諾」が事務所等以外でなされても、クーリング・オフは認める必要はないのである。

 「申込者等」とは、買受けの申込みをした者(契約の成立に至っていない場合)及び買主(契約が成立した場合)をいう。


Point1 「クーリング・オフできる旨を告げる」のは、業者の義務ではない。しかし、できる旨を告げなければ「8日間」のカウントが始まらないのだから、いつまでたっても解除されるということになる。


Point2 この告知は、必ず「書面」でしなければならない。口頭で告げても無効である。なお、8日には告げられた日も含める(初日算入)。


Point3 物件の引渡しが済んで、代金の全額が支払われたときにはクーリング・オフできない。契約の履行がすべて終わってから解除されたのでは、業者にあまりに酷だからである。なお、「引渡し」と代金の「全額」の支払いの両方終わって初めて解除できなくなる。例えば、代金の一部だけ支払った場合は、まだ解除できる


Point4 移転登記が終わったか否かは、解除には関係ない。登記は「対抗要件」であり、必ずしなければならないものではないからである。


クーリング・オフの効果

 クーリング・オフは無条件解除であるから、業者にとってはできるだけ行使されたくない。すると、事実上、クーリング・オフの障害となる行為が行われるおそれがある。宅建業法は、クーリング・オフの効果の規定によって、そのような不当な行為を排除する。


① 申込みの撤回又は契約の解除は、書面を発したときに効力が生じる(発信主義)。
② クーリング・オフされた場合、宅建業者は、損害賠償又は違約金を請求できない
③ クーリング・オフされた場合、宅建業者は、手付金・その他の金銭を速やかに返還しなければならない。
④ クーリング・オフの規定に反する特約で、申込者等に不利なものは無効である。

※ 契約の解除等の効果は、書面を発信したときに生じる。したがって、発信後事故等で到達しなくても解除等の効果は生じる。