- 民事執行法ー14.担保権の実行としての競売
- 1.担保権の実行
- 担保権の実行
- Sec.1
1担保権の実行
■担保権の実行
(1) 競売手続
① 任意競売手続
a) 意義
抵当権等の担保権の実行による競売のことを任意競売という。ここで「任意」という用語は抵当権等の担保権の実行も強制的に行われるものの、設定者としては自己の不動産等を担保に提供したのであるから、所有権を失うことを甘受せざるを得ないという意味で「任意」ということである。
b) 手続
担保権の実行としての競売においても、執行機関が担保目的物を差し押えて換価し、配当等を実施するのが原則である。すなわち金銭執行の場合と同様に差押え→換価→満足という3段階のプロセスを経るのが原則である。
② 金銭執行手続の準用
担保権の実行手続は、強制執行手続と類似するため、大幅に強制執行手続が準用されている。
ただ、担保権の実行では債務名義は不要なので、債務名義や執行文に関する諸規定は準用がされない。
(2) 強制競売と担保権実行の差異
① 債務名義の要否
担保権の実行は、強制執行の場合と異なり債務名義が不要である。担保権の存在を証する一定の文書を法定し、それが提出されたときに手続を開始する(民執法181条1項、189条、190条、193条1項)。
② 実体上の理由による執行異議
執行異議は、本来手続上の瑕疵に対する不服申立て方法だが、担保権の実行手続では手続上の瑕疵のみならず実体上の理由(担保権の不存在、消滅等)も執行異議によって主張することができる。
強制執行の場合、債務名義に表示された請求権の不存在又は消滅を執行異議の申立てでは主張できなかった点と比較。
③ 実行手続の停止と取消し
担保権の実行を妨げる事由が存在することを証する法定の文書の提出があったときは、執行機関は担保権の実行手続を停止しなければならず、それが担保権の不存在を証する文書であるときは既にした執行処分も取り消さなければならない(民執法183条、189条、192条、193条2項)。
強制執行では執行停止•取消し文書に基づく停止・取消しに関する定めがあるが、担保権の実行では債務名義自体が不要であるため、強制執行の停止・取消し規定は準用されず、独自の規定が設けられている。