- 民事執行法ー13.金銭の支払を目的としない請求権についての強制執行(非金銭執行)
- 3.子の引渡しの強制執行
- 子の引渡しの強制執行
- Sec.1
1子の引渡しの強制執行
■子の引渡しの強制執行
例えば、離婚後の夫婦の間で子の引渡しをめぐって紛争になったような場合に、監護権を有しない親〔=現に子を監護している親〕から監護権を有する親への子の引渡しの強制執行が行われることがある。
(1) 子の引渡しの強制執行の方法
子の引渡しの強制執行は、次の方法のいずれかにより行う(民執法174条1項)。
① 執行裁判所が決定により執行官に子の引渡しを実施させる方法(以下「直接的な強制執行」という。) ② 間接強制〔民執法172条1項〕の方法 |
(2) 直接的な強制執行が認められる要件
子の引渡しの強制執行は、間接強制の方法〔上記(1)②〕によって行うことが原則である(民執法174条1項2号、172条1項)。子どもの心身に与える影響などを考慮すると、債務者が自発的に子を引き渡すほうが望ましいからである。
例外的に、直接的な強制執行〔上記(1)①〕の申立てをすることができるのは、次のいずれかに該当する場合である(民執法174条2項)。
① 間接強制の決定〔民執法172条1項〕が確定した日から2週間を経過したとき(当該決定において定められた債務を履行すべき一定の期間の経過がこれより後である場合には、その期間を経過したとき)(1号)。 ② 間接強制の方法による強制執行を実施しても、債務者が子の監護を解く見込みがあるとは認められないとき(2号)。 ③ 子の急迫の危険を防止するため直ちに強制執行をする必要があるとき(3号)。 |
②③の場合は、間接強制を前置することなく、直ちに、直接的な強制執行の申立てをすることができる。
(3) 直接的な強制執行の手続
① 債務者の審尋
直接的な強制執行の決定をする場合は、執行裁判所は、債務者〔=現に子を監護している親〕を審尋しなければならない(民執法174条3項)。ただし、子に急迫した危険があるときその他の審尋をすることにより強制執行の目的を達することができない事情があるときは、審尋を省略することができる(同項ただし書)。
② 執行官による執行実施
執行裁判所は、直接的な強制執行の決定において、執行官に対し、債務者による子の監護を解くために必要な行為をすべきことを命じなければならない(民執法174条4項)。
③ 不服申立て(執行抗告)
直接的な強制執行の申立てに対しては、執行抗告をすることができる(民執法174条6項)。