• 民事執行法ー13.金銭の支払を目的としない請求権についての強制執行(非金銭執行)
  • 1.非金銭執行の意義
  • 非金銭執行の意義
  • Sec.1

1非金銭執行の意義

堀川 寿和2022/02/04 12:52

意義

 非金銭執行とは、金銭を目的としない請求権についての強制執行をいう。次の種類がある。

物の引渡し・明渡請求権の執行

作為・不作為請求権の執行

子の引渡しの強制執行

意思表示の擬制

 

執行方法

(1) 不動産・動産の明渡し、引渡しを目的とする請求権

意義

 不動産・動産の明渡し、引渡しを目的とする請求権の強制執行方法は直接強制の方法によるのが原則であるが、物の引渡しを目的とする強制執行については債権者の申立てにより執行裁判所による間接強制の方法も認められることになった。直接強制の方法によるか、間接強制の方法によるか債権者が選択することができる。

間接強制

 間接強制とは、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法である(民執法172条1項)。間接強制の執行により支払われた金銭はその限度で債務不履行による損害賠償債務の弁済に充当される。事情の変更があったときは、執行裁判所は、申立てにより、間接強制の決定を変更することができる(同条2項)。つまり支払金額の増減をすることができる。執行裁判所は、間接強制の決定又はその決定の変更をする場合には、申立ての相手方を審尋しなければならない(同条3項)。

 

(2) 作為•不作為を目的とする請求権

 債務者以外の者が代ってできるもの(代替的作為債務)については代替執行の方法による。代替執行とは、債務者に代わって第三者が履行できる代替的債務についての強制執行は執行裁判所が債務者の費用をもって第三者にその行為をさせることができる権能を債権者に授与する決定である。代替執行によることができる債務の例としては、建物の収去義務や新聞紙上への謝罪公告文の掲載義務などが挙げられる。なお、代替的作為債務についても、間接強制の方法によっても執行ができるようになった。また、債務者自身がしなければ目的を達せられないもの(不代替的作為債務)については、間接強制の方法による。

 

判例

(最決H17.12.9)

 

不作為を目的とする債務についての強制執行を間接強制の方法によってするには、債務者が現に不作為義務に違反していることは必ずしも要せず、不作為義務に違反するおそれがあることが立証されれば間接強制の決定がなされ得る。