- 民事執行法ー10.不動産に対する強制執行
- 3.強制管理
- 強制管理
- Sec.1
■強制管理の手続
(1) 不動産強制競売手続の規定の準用
強制管理には、強制競売の手続が準用される(民執法111条)。したがって、
「差押え」→「収益の収取・換価」→「満足」の順で手続が進行する。
ただし、強制管理は不動産の換価は行われないため、不動産の換価手続は準用されない。
(2) 強制管理の時期
強制管理は、強制競売と併用することができるが、売却により債務者が所有権を喪失したときには、強制管理の続行が不可能となり、強制管理の手続は取り消されることになる。
■強制管理の開始
(1) 強制管理開始決定
強制管理は、債権者の申立てによって開始され、執行裁判所は申立てを適法と認めるときは強制管理の開始決定をする(民執法93条1項)。
(2) 差押え
① 差押え
執行裁判所は開始決定において、債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言し、かつ債務者に対し収益の処分を禁止し、及び債権者が賃貸料の請求権その他の当該不動産の収益に係る給付を求める権利を有するときは、債務者に対して当該給付をする義務を負う者に対しその給付の目的物を管理人に交付すべき旨を命じなければならない(民執法93条1項)。強制管理の開始決定は債務者及び給付義務者に送達しなければならない(同条3項)。
② 差押えの効力発生時期
差押えの効力は債務者との関係では強制競売の場合と同様に、開始決定が債務者に送達されたとき又は差押登記のときのいずれか早いときに生ずる(民執法111条、46条1項)。
③ 差押登記の嘱託
強制管理の開始決定がされたときは、裁判所書記官はただちにその開始決定に係る差押えの登記を嘱託しなければならない(民執法111条、48条)。
(3) 不服申立て
強制管理の申立てについての裁判に対しては執行抗告をすることができる(民執法93条5項)。
開始決定又は強制管理の申立てを却下する裁判いずれに対しても可能である。
cf 強制競売の場合は申立てを却下する場合のみ執行抗告事由だったことと比較。
強制競売開始決定に対する不服申立は執行異議による。
(4) 二重開始決定
① 開始決定
既に強制管理の開始決定がされ、又は民執法180条2号に規定する担保不動産収益執行の開始決定がされた不動産について強制管理の申立てがあったときは、執行裁判所は、更に強制管理の開始決定をするものとする(民執法93条の2)。
② 強制競売の準用
二重開始決定がなされた場合に、先の決定等が取り下げ、取消しされた場合、もしくは停止された場合の取り扱いは強制競売の場合と同様である(民執法111条、民執法47条2項5項)。
(5) 管理人
① 管理人の意義
管理人とは、執行裁判所の命令により不動産の管理を行う裁判所の補助機関をいう。
② 管理人の選任
執行裁判所は、強制管理の開始決定と同時に管理人を選任しなければならない(民執法94条1項)。