- 民事執行法ー6.債務名義と執行文
- 4.執行文付与をめぐる救済手段
- 執行文付与をめぐる救済手段
- Sec.1
1執行文付与をめぐる救済手段
■意義
執行文付与をめぐる当事者の救済方法として、次のものがある。
① 執行文付与等に関する異議の申立て (イ)執行文付与に対する異議 (ロ)執行文付与の申立て却下に対する異議 ② 執行文付与の訴え ③ 執行文付与に対する異議の訴え |
■執行文付与等に関する異議の申立て (執行文の付与・執行文付与の申立て却下に対する異議)
(1) 意義
執行文付与の申立てをしたのに付与されないときは債権者が、執行文が付与されるべきではないのに付与されたときは債務者が、それぞれ異議の申立てをすることができる(民執法32条)。執行文を付与し又はこれを拒絶する処分は、執行機関の処分ではないため、請求異議の訴えによることができないからである。
(2) 管轄(民執法32条1項)
① 裁判所書記官の処分
裁判所書記官の所属する裁判所
② 公証人の処分
公証人の役場の所在地の地方裁判所
(3) 異議事由
① 執行文付与に対する異議
異議事由は執行文付与の要件が具備しないことである。条件成就執行文では事実の到来、承継執行文における承継その他の執行力拡張の事由の証明がないことも異議事由となる。
② 執行文付与の申立て却下に対する異議
異議事由は執行文付与の要件が具備していることであり、条件成就執行文における条件の成就、承継執行文における承継の事実についての債権者による証明の有無も異議事由である。
(4) 異議申立てについての裁判
この裁判は口頭弁論を経ないですることができ、決定で裁判する(民執法32条3項)。
(5) 不服申立て
上記異議申立てについての裁判や執行停止等を命じる裁判に対しては不服申立てができない(民執法32条4項)。
■執行文付与の訴え
(1) 意義
執行文付与の訴えとは、条件成就執行文、承継執行文の付与に際して、債権者が事実の到来、承継の事実を証明する文書を提出することができない場合に、債権者が債務者を被告として執行文の付与を受けることができる旨の判決を求める訴えである(民執法33条1項)。債権者がそれらの事実を文書で証明できれば執行文の付与がなされるが、文書で証明できずそれ以外の証拠方法(ex証人尋問、当事者尋問)で証明できる場合に利用される。
(2) 審理
訴えであるため、通常の判決手続で審理される。したがって口頭弁論を開く必要がある。
債権者はこの訴訟において、条件の成就又は債権者・債務者の承継を主張立証し、債務者はそれを争うことができるほか、執行文付与の形式的要件(判決の確定の遮断や執行停止など)も主張することができる。それに対し、債務者がこの訴えにおいて、請求権の不存在、消滅、裁判以外の債務名義の成立などの請求異議事由を抗弁として主張できるかについては争いがあるが、判例(最S52.11.24)及び通説は、これを認めると債権者の執行文の取得が遅延することなどを理由に否定説に立つ。
つまり債務者は債務名義の効力自体を争うことはできないことになる。