• 民事執行法ー5.強制執行の意義
  • 1.強制執行の意義
  • 強制執行の意義
  • Sec.1

1強制執行の意義

堀川 寿和2022/02/03 15:52

強制執行の意義

 強制執行とは、国家の執行機関が、債務名義に基づいて、債権者の私法上の給付請求権を強制的に実現するための法律手続をいう。

 私法上の請求権は、それが金銭債権か、それ以外の非金銭債権かによって大きく異なる。

 

(1) 金銭執行

 金銭執行は直接強制の方法による。強制執行の対象となる責任財産の種類に応じて、不動産執行、動産執行、船舶執行、債権執行等に分かれるが、どの財産の場合でも原則として、

差押え⇒換価⇒満足という3段階の手続過程を経る。具体的には、執行機関がまず差押えをして、次に入札・競り売り等によって差押財産を換価し、最後にその換価金を債権者に交付・分配するという手続で進行する。ただ金銭を差し押えた場合には換価の必要がないため、差押え⇒満足の2段階で処理される。

 

(2) 非金銭執行

 れに対し、非金銭債権の場合は、その請求権の内容によって執行方法も異なる。

不動産・動産の引渡しの強制執行

 債権の内容が、不動産・動産の明渡し・引渡しを目的とするときは直接強制の方法による(民執法168条~170条)。具体的には、執行機関が債務者からその物を強制的に取り上げて債権者に引き渡す方法による。

② 作為・不作為請求権の強制執行

a) 代替的債務

 作為又は不作為を目的とする債務で、債務者以外の者が代わってすることができる債務(工作物の撤去義務など)については、代替執行の方法による(民執法171条)。具体的には、債務者が自ら履行しない場合、債務者の費用で第三者にこれらをやらせる方法による。

 そして、それにかかった費用については、金銭執行の方法により債務者の財産から取り立てることになる。

b) 不代替的債務

 作為又は不作為を目的とする債務で、債務者以外の者が履行したのでは債務の本旨に従った履行にならない場合は、間接強制の方法による(民執法172条)。具体的には、債務者に対し相当と認められる一定額を不履行の場合に支払うべき旨の命令を発するという方法による。

③ 意思表示を求める請求権の強制執行

 意思表示を求める請求権の強制執行は、意思表示の擬制による(民執法177条1項)。

 詳しくは後述するが、不動産登記法で学習した「判決による登記」も、この意思表示の擬制によるものである。

 

(3) 直接強制・代替執行・間接強制

 従来は、直接強制が可能な場合は直接強制の方法により、代替的作為債務については、代替執行の方法により、そして間接強制は直接強制や代替執行の方法によれない場合にのみ用いることができるとされてきた。しかし、近年では、改正により間接強制の適用範囲が拡大され、そのいずれの方法により執行を行うかは債権者の自由選択によるものとされた(民執法173条1項)。

物の引渡債務の強制執行

 債権者の申立てにより、直接強制又は間接強制の方法によることができる。

代替執行可能な作為・不作為債務の強制執行

 この場合も代替執行の方法に加え、間接強制の方法を用いることができる。