- 民事執行法ー4.違法執行・不当執行の救済
- 6.第三者異議の訴え
- 第三者異議の訴え
- Sec.1
1第三者異議の訴え
■第三者異議の訴え
(1) 第三者異議の訴えの意義と趣旨
第三者異議の訴えとは、強制執行において債務者以外の第三者の財産が差し押えられた場合に、第三者が自己の所有権、その他執行を妨げる実体上の権利を主張して執行の排除を求めて、債権者を相手方として提起する訴えをいう(民執法38条1項)。
請求異議の訴えは当該債務名義の執行力を排除し、これに基づく執行全体の排除を目的とするのに対し、第三者異議の訴えは特定の目的物への執行の排除の裁判を求める点で異なっている。
強制執行を迅速にするため、執行機関は執行開始にあたって目的物が債務者の責任財産に属することを確定的に判断することなく、外観上債務者の責任財産に属すると認められればそれに対して執行が行われる。その結果、第三者の財産につき誤って差押え等がおこなわれることがあり、かかる第三者の保護のために認められるものである。
(2) 訴訟当事者
① 原告適格者
原告は、執行当事者以外の第三者で、執行目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を主張する者である。この第三者の債権者も、第三者の権利を代位行使して、この訴えを提起することができる。
② 被告適格者
執行債権者である。
(3) 第三者異議の訴えの手続
① 訴えの提起期間
強制執行開始後、終了するまでの間認められる。執行開始前は当該目的物に対し執行されるか否かは不明であるため提起できない。
cf 請求異議の訴えは、強制執行開始前でも提起できた点と比較!
② 管轄
訴訟物の訴額に関係なく、執行裁判所が専属して管轄裁判所となる(民執法38条3項、19条)。第三者異議の訴えは、目的物の権利・法律関係をめぐる争いがその審理対象となるため、目的物所在地の裁判所を管轄裁判所とするのが妥当だからである。
③ 判決
a) 請求に理由があるとき
目的物に対する強制執行を許さない旨が宣言される。この判決には仮執行の宣言を付すことができ、執行不許の確定判決又は仮執行宣言付の判決正本を執行機関に提出することにより執行は停止され、取り消される(民執法39条、40条)。
b) 請求に理由がないとき
請求を棄却する。
(4) 執行停止の仮の処分
① 原則
第三者異議の訴えが提起されても、執行停止の効力はない。
② 例外
請求異議の訴えの場合と同様に、第三者の申立てにより、執行停止等の仮の処分が認められると、執行は停止される。しかし、同一の債務名義に基づき、他の目的物に対する強制執行の申立ては可能である。債務者の他の財産に対する債務名義の効力に影響はないからである。