- 民事執行法ー4.違法執行・不当執行の救済
- 3.執行異議
- 執行異議
- Sec.1
1執行異議
■意義
執行異議とは、執行裁判所の執行処分で執行抗告ができないもの及び執行官の執行処分ないしその遅怠に対する執行裁判所に対する不服申立てをいう。執行裁判所に対する一審限りの不服申立て方法であって、その実質は再度の考案の申立てである。
■異議事由
(1) 原則
異議事由は、主として手続上、形式上の瑕疵に限定される。執行裁判所が実体上の権利の存否などを判断するのは適当でないからである。つまり債務名義に表示された請求権の不存在又は消滅を理由として、執行異議はできないということである。
(2) 例外
担保権の実行については、その存在や消滅という実体上の理由を異議事由にすることができる(民執法182条)。強制執行においては、執行文の付された債務名義を要するのでこれに対する実体法上の事由による救済方法として請求異議の訴えや執行文付与に対する異議の訴えが認められており、実体法上の権利の存否などは執行異議事由とすることはできない。他方、担保権の実行には債務名義を要しないのでこれらの規定は準用されず、執行異議や執行抗告によって実体法上の事由を主張し担保権実行としての競売開始を争うことができるのである。
■執行異議の手続
(1) 申立権者
執行異議の申立てができる者は、違法な執行処分又は執行処分の遅怠により不利益を受ける者であれば、債権者、債務者のみならず第三者でもよい。
(2) 方式
① 原則
執行異議の申立ては、異議理由を明示して、書面によってしなければならない。
② 例外
売却決定期日、配当期日などの期日においては、口頭ですることもできる(民執規8条1項)。
(3) 期間
申立て期間に制限はない。異議申立ての利益がある限りいつでも認められる。ただし、手続が完結してしまうと執行処分を取り消すことができないため、執行異議は却下されることになる。
(4) 口頭弁論の要否
執行異議の審判は口頭弁論を経ることを要せず、決定により裁判を行う(民執法4条)。
口頭弁論を経ないときは、当事者を審尋することができる、必要なときは当事者以外の第三者を審尋することもできる(民執法5条)。
(5) 裁判
① 異議申立てが不適法であるとき
却下する。
② 理由がないとき
棄却する。
③ 理由があるとき
(イ)執行裁判所の執行処分であるとき
自己の執行処分を取り消しまたは変更する。
(ロ)執行官の処分であるとき
執行を許さない旨を宣言し、執行の取消しを命じ、不作為に対するときは執行をなすべき旨を宣言する。