- 民事執行法ー1.民事執行序論
- 1.民事執行序論
- 民事執行序論
- Sec.1
1民事執行序論
■民事執行序論
(1) 民事執行の意義
民事執行とは、私法上の権利内容を強制的に実現する裁判上の手続である(民事執行法1条)。例えば、AがBに100万円を貸したのに返してもらえない場合、どのような手続でAに、100万円の債務の支払があったのと同様の経済的効果を得させるのかについて定めたのが民事執行法(以下、民執法という。)である。具体的には、次の4つの総称である。
(2) 民事執行の種類
① 強制執行
強制執行とは、一般の無担保債権者が債務名義に基づいて、その請求権を強制的に実現する手続である。一般債権者が貸金債権の回収のため債務者の財産を競売に付するためには、債務名義が必要である。もし債務者が任意に履行しない場合、債権者は債務者を相手とする貸金返還訴訟を提起し、勝訴判決を得ればそれを債務名義として強制執行の申立てをし、一定の手続を経て自己の権利を強制的に実現することができる。これが強制執行による権利の実現である。金銭債権か金銭債権以外かで手続が異なる。金銭債権を有する者がなす強制執行を金銭執行といい、それ以外の債権を有する者がなす強制執行を非金銭執行という。
② 担保権の実行としての競売
不動産、動産、債権その他の財産上に担保権を有する者による担保権の実行手続をさす。その方法は、債務名義が不要である点以外は、金銭執行に準ずる。
③ 民法・商法その他の法律の規定による換価のための競売
民法、商法その他の法律の規定による、請求権の実現ではなく、換価を主たる目的とする競売をいう。共有物分割のための競売(民法258条2項)や留置権による競売などがこれにあたる。
④ 債務者の財産の開示
債務者の財産開示制度とは、債務名義を有する債権者又は一般先取特権者の申立により、裁判所が財産開示手続の実施決定をして債務者を呼び出し、非公開の期日において、債務者に宣誓の上、自己の財産について陳述させることにより、債務者の責任財産を特定可能なものとする制度である。詳しくは後述する。