• 民事訴訟法ー25.簡易裁判所の手続の特則
  • 2.起訴前の和解
  • 起訴前の和解
  • Sec.1

1起訴前の和解

堀川 寿和2022/02/03 14:28

起訴前の和解

(1) 起訴前の和解の意義

 起訴前の和解とは、民事上の紛争について、訴えの提起前に当事者の申立てにより、簡易裁判所で行われる和解をいう(民訴法275条)。債務名義の簡易な取得方法としてよく利用されている。

 訴訟上の和解と同じく栽判上の和解であるが、訴訟係属を前提としない点で前者と異なる。

 

(2) 起訴前の和解の申立

管轄裁判所

 訴額にかかわらず簡易裁判所の職分管轄であり、土地管轄は相手方の普通裁判籍所在地の簡易裁判所である。

方式

 和解の申立ては、書面または口頭で、請求の趣旨・原因及び争いの実情を表示してする(民訴法275条1項)。必ずしも当事者双方による申立ての必要はない。

 

(3) 起訴前の和解の手続

和解期日の指定と当事者の呼出し

 和解の申立てが不適法な場合は決定で却下する。申立てが適法な場合には裁判所は和解期日を定め、申立人及び相手方を呼出して、和解を試みる。

和解の成立

 和解が成立したときは和解条項を調書に記載する(民訴規169条)。調書の記載は確定判決と同一の効力を有する(民訴法267条)。

和解の不調

 和解が調わなかったときには和解手続は終了する。ただし、期日に出頭した当事者双方の申立てがあるときは、裁判所はただちに訴訟としての弁論を命じ、この場合には和解申立てのときに訴え提起があったものとみなす(民訴法275条2項)。和解期日に当事者の一方又は双方が出頭しないときも、和解が調わないものとみなすことができる(同条3項)。

 

(4) 和解受諾書面・裁定和解制度の不適用

 起訴前の和解については、和解条項の書面による受諾(民訴法264条)、裁判所が定める和解条項に当事者が服する旨の申立てにより和解が調ったものとみなす制度(民訴法265条)は適用がない(民訴法275条4項)。