• 民事訴訟法ー23.上訴
  • 4.抗告
  • 抗告
  • Sec.1

1抗告

堀川 寿和2022/02/03 14:15

抗告

(1) 抗告の意義

 抗告とは、決定・命令に対する独立の上訴方法をいう。

 

(2) 抗告の種類

通常抗告

a) 公告期間の定め

 なし。公告の利益がある限りいつでも可能である。

b) 執行停止の効力

 執行を停止するためには、別途執行停止の裁判が必要となる(民訴法334条2項)。

即時抗告

 法令に即時抗告ができる旨の個別の規定がある場合にのみ認められる。

a) 公告期間の定め

 告知を受けた日から1週間以内に限られる(民訴法332条)。

b) 執行停止の効力

 即時抗告がなされると、当然に執行が停止される(民訴法334条1項)。

 

(3) 抗告ができる裁判

① 口頭弁論を経ないで訴訟手続に関する申立てを却下した決定・命令(民訴法328条1項)

 移送申立て、忌避申立て、期日指定の申立て、受継の申立て等に関する裁判がこれにあたる。

② 違式の決定・命令(民訴法328条2項)

 決定・命令では裁判できない事項(本来なら判決によるべき事項)につきなされた決定・命令に対しては、その裁判の形式を基準に上訴が許される。

③ その他法律が個別に即時抗告を認めている場合(民訴法86条、137条3項等)

 

(4) 抗告裁判所

① 簡易裁判所の決定・命令

 地方裁判所

② 地方裁判所の決定・命令

 高等裁判所

③ 高等裁判所又は最高裁判所の決定・命令

 抗告することはできない。最高裁判所は、特別抗告と許可抗告を除いては抗告審とならないからである。

 

(5) 抗告提起の効果

 決定・命令は成立とともに執行力を生ずる(民執法22条3号)。抗告は即時抗告に限り執行停止の効力を有し、通常抗告は執行停止の効力を有しない。しかし、抗告裁判所又は原裁判所又は裁判官は抗告について決定があるまで原裁判の執行を停止することができる(民訴法334条)。

 

(6) 抗告の方式

 抗告は原裁判所に対し、書面で提起しなければならない(民訴法331条、286条)。

 抗告状に原裁判の取消し・変更を求める事由の具体的記載がないときは、抗告人は、抗告提起後14日以内に、これらを記載した書面(抗告理由書)を原裁判所に提出しなければならない(民訴規207条)。

 

(7) 抗告の審理

① 原裁判所の措置

a) 原裁判所の抗告却下

 抗告が不適法でその不備を補正することができないことが明らかな場合は、原裁判所は決定で抗告を却下しなければならない(民訴法331条、287条)。

b) 再度考案

 抗告が提起された場合は、原裁判に対する自縛力が排除され、原裁判をした裁判所又は裁判長は自ら抗告の当否を審査して理由があると認めるときは原裁判を更正しなければならない(民訴法333条)。

c) 事件の送付

 再度の考案の結果、抗告理由なしと認めるとき、原裁判所は意見を付して事件を抗告裁判所に送付しなければならない(民訴規206条)。これにより、事件は抗告審へ移審する。

② 抗告裁判所の措置

 原裁判所から事件の送付を受けたときは自ら抗告を審理する。抗告審の手続は、控訴審に関する規定が準用される(民訴法331条)。抗告審の審理は決定手続であるから、口頭弁論を開くか否かは任意である。口頭弁論を開かないときは抗告人、相手方その他の利害関係人を審尋することができる(民訴法335条)。

 

(8) 許可抗告

 高等裁判所の決定・命令に対しては、その高等裁判所が許可した場合に限り、最高裁判所に抗告することが認められ、これを許可抗告という(民訴法337条1項)。抗告についても、憲法判断については後述する最高裁判所への特別抗告によって法令解釈の統一を図ることができる。しかしそれ以外の決定についても重要なものがあり、最高裁判所による解釈の統一が必要な場合があるところから認められた。