- 民事訴訟法ー23.上訴
- 2.控訴
- 控訴
- Sec.1
1控訴
■控訴の意義
控訴とは、第1審の終局判決に対して、その取消し又は変更を求めて第2審に対してする不服申立てをいう。簡易裁判所が1審のときは地方裁判所、地方裁判所が1審のときは高等裁判所が控訴裁判所となる。
■控訴の要件
控訴が適法であるためには控訴要件が必要である。控訴要件を欠くときは、控訴が却下される。
(1) 控訴の利益を有すること (2) 当事者間に控訴権の放棄・喪失がないこと (3) 当事者間に不控訴の合意がないこと |
(1) 控訴の利益を有すること
① 控訴の利益の意義
控訴の利益とは、第1審判決に不服があることをいう。訴え却下の判決の場合は、訴え却下を申し立てた被告には不服がない申立てどおりの判決だからである。しかし原告はもちろん、請求棄却を求めていた被告にも不服が認められ、上訴の利益があることになる(最S 40.3.19)。
② 判決理由中の判断に対する不服
(イ)原則
理由中の判断に不服があっても控訴の理由とならない。したがって、例えば、弁済の抗弁と消滅時効の予備的抗弁を提出していた被告が、時効によって勝訴しても弁済を主張して控訴する利益は認められない。どの理由によって勝訴しても被告に不利益はないからである。
(ロ)例外
例外的に、被告が弁済を主張し、予備的に相殺の抗弁を提出して、相殺が認められて原告の請求が棄却された場合、被告は形式的には全部勝訴であってもより有利な弁済の抗弁の認定を求めて控訴することができる。
(2) 当事者間に控訴権の放棄・喪失がないこと
控訴権は放棄でき、また控訴期間の徒過により、控訴権は消滅する。その後の控訴は不適法として却下される。
(3) 当事者間に不控訴の合意がないこと
不控訴の合意とは、当事者間の控訴しない旨の合意をいう。1審のみで訴訟を終了させる旨の合意である。この合意があれば控訴権は発生せず、第1審判決は言渡の時に確定する。
■控訴の方式
(1) 控訴状の提出
控訴の提起は、控訴状を第1審裁判所に提出してしなければならない(民訴法286条1項)。
(2) 控訴状の必要的記載事項
① 必要的記載事項
(イ)当事者及び法定代理人
(ロ)第1審判決の表示及びその判決に対して控訴をする旨
② 控訴理由書の提出
控訴理由は控訴状に記載してもよいとされているが、もしその記載がないときは控訴人は控訴の提起後50日以内に第1審判決の取消し・変更を求める事由を具体的に記載した書面(控訴理由書)を控訴裁判所に提出しなければならない(民訴規182条)。
(3) 控訴期間
控訴は、判決書又は判決に代わる調書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起しなければならない。ただし、その期間前に提起した控訴の効力を妨げない(民訴法285条)。
(4) 第1審裁判所による控訴の却下
第1審裁判所は、控訴状の提出を受けた場合において、控訴が不適法でその不備を補正することができないことが明らかなときは決定で控訴を却下しなければならない(民訴法287条1項)。例えば、控訴期間の徒過、控訴の利益がないなどの場合である。この決定に対しては即時抗告をすることができる(同条2項)適法な控訴である場合には、第1審裁判所書記官は、遅滞なく訴訟記録を控訴裁判所に送付しなければならない。
(5) 控訴裁判所による審査
① 控訴状の審査
控訴裁判所の裁判長は控訴状を審査し、必要的記載事項、印紙が欠けている場合は補正を命じ、応じなければ控訴状を却下する(民訴法288条)。
② 口頭弁論を経ないで控訴の却下
控訴が不適法でその不備を補正できないときは、控訴裁判所は口頭弁論を経ないで、判決で控訴を却下することができる(民訴法290条)。
③ 控訴状の送達
適法な控訴と認めれば、控訴状を被控訴人に送達する(民訴法289条1項)。