• 民事訴訟法ー22.当事者の交替
  • 4.特定承継
  • 特定承継
  • Sec.1

1特定承継

堀川 寿和2022/02/03 14:00

特定承継

(1) 特定承継の意義

 特定承継とは、訴訟物の譲渡の場合、すなわち訴訟中に当事者が係争物を譲渡した場合に、承継手続によって訴訟承継が生じる場合をいう。例えば、家屋収去土地明渡請求訴訟の係争中、原告が土地を第三者に売却した場合、被告が家屋を第三者に売却した場合、いずれも当事者適格を失っており、新取得者に訴訟を承継させる必要がある。係争物の譲渡によって当事者適格が移転したら、新適格者に対して判決を下さないと紛争解決を図ることができないため、新適格者を訴訟に引き込む趣旨である。

 

(2) 特定承継の種類

 譲受人の方からその訴訟に参加の申立てをする「参加承継」と、譲渡人の相手方の方から讓受人に対しその訴訟の引受けの申立てをする「引受承継」とがある。当然承継と異なり、承継人の訴訟参加の申立て又は従来の当事者の相手方の訴訟引受の申立てによって、初めて訴訟の承継が行われる場合である。

 

(3) 訴訟承継の効果

 訴訟承継がなされると、承継人は従前の訴訟状態をそのまま引き継ぐことになる。承継前の弁論や証拠取調べ、裁判等の訴訟行為の効力はすべて承継後の訴訟において効力をもつし、当初の訴え提起による時効完成猶予、期間遵守の効果も新当事者(承継人)に引き継がれる。したがって、前主がすでにできなくなった行為を承継人がすることができないことになる。

 

(4) 参加承継

 新たな紛争主体となった承継人が自ら訴訟参加の申出をして、独立参加の形式で当事者になる場合である。参加があれば、前主である原告又は被告は、相手方の承諾を得て脱退することができる。

 

(5) 引受承継

 訴訟物である権利又は義務につき特定承継がなされた場合に、裁判所が前主の相手方である当事者の申立て(引受の申立て)によりその第三者に訴訟を引受けさせることをいう。裁判所は、申立人及び第三者を審尋の上、決定でその許否の裁判をする(民訴法50条2項、51条)。引受の決定がなされた場合、承継人は当事者となり、前主の訴訟上の地位を承継する。承継人に対して引受決定があった場合は、前主である当事者は、相手方の承諾を得て訴訟から脱退できるが、判決の効力は脱退者にも及ぶことになる。

 

判例

(大S16.4.15)

 

引受を命ずる決定は、中間的裁判であるため、独立の不服申立てはできない。