• 民事訴訟法ー15.終局判決
  • 3.中間判決
  • 中間判決
  • Sec.1

1中間判決

堀川 寿和2022/02/03 10:26

中間判決の意義

 中間判決とは、審理の途中で問題となった争点について判断を下し、終局判決の準備に役立たせるための判決をいう。裁判所は、独立した攻撃又は防御方法その他中間の争いについて、裁判をするのに熟したときは、中間判決をすることができる。請求の原因及び数額について争うがある場合におけるその原因についても同様とする(民訴法245条)。

 

原告Aが彼告Bに対して所有権移転登記訴訟を提訴し、請求原因事実として

第1次的に売買を主張し、予備的に時効取得を主張した。

                   ↓

裁判所が、まず売買について審理して、売買の事実は認められないと判断したら

売買の事実は認められない旨の中間判決により宣言することができる。

                   ↓

以後、原告Aは売買に関する主張や証拠調べの申立をすることができなくなる。

                   ↓

その後、裁判所は、時効取得についての審理のみをして、終局判決を出せばよい。

 

 

 

        争点① Bに過失があるか否か?

② 損害賠償額は200万か300万か?

   ↓

このような場合に双方の争点について審理を並行して進めると、

請求原因たる過失がないと認定されたら、損害賠償の額についての

審理が無駄になってしまう。

   ↓

そこで、まず過失の有無について中間判決で結論を出しておく。

 

 

中間判決事項

(1) 独立した攻撃又は防御方法

 独立した攻撃防御方法とは、他の攻撃防御方法とは無関係に分離・独立して審理し判断することができ、それだけで1つのまとまった権利・法律関係の存否の判断ができるような攻撃防御方法のことをいう。例えば、所有権移転登記訴訟において、原告が所有権取得原因として売買契約による取得と時効取得とを主張している場合、各主張は他の主張と無関係に判断できるから独立した攻撃防御方法といえる。

 

(2) 中間の争い

 訴訟手続に関する当事者間の争いで、口頭弁論に基づいて判断すべきものをいう。例えば、訴訟要件の存否、訴え取下げの効力、訴訟承継の有無等をめぐる争いがその例である。もっとも、これらについての判断の結果、訴訟が完結してしまうときは、中間判決ではなく終局判決をするべきである。

 例えば、訴訟要件の欠缺や訴え却下又は訴えの取下げの有効性が認められる場合には、中間判決ではなく、訴え却下の終局判決をすることになる。もしそうでない場合には、中間判決によって、争いのある部分について決着をつけて、その他の争いのある部分について審理を続行することになる。

 

(3) 請求の原因及び数額につき争いがある場合の原因

 債務不履行や不法行為に基づく損害賠償請求では、その請求原因が肯定されてはじめて損害額が問題となる。実際の訴訟では請求原因と数額のいずれも争われることが多く、その場合には数額の判断を後回しにして、まず原告の主張する請求原因が認められるか否かを中間判決で明らかにすることができる。

中間判決の効力

自己拘束力、自縛力

 中間判決をすると、その審級の裁判所は中間判決の主文で示した判断に拘束され、その判断を前提として終局判決をしなければならない。

遮断効

 当事者は、その判断を争うために中間判決の直前の口頭弁論期日終結時(中間判決の基準時)までに提出できた攻撃防御方法はその後の口頭弁論で提出できなくなる。

既判力、執行力

 中間判決には、既判力も執行力も生じない。