- 民事訴訟法ー14.訴訟の終了
- 4.訴訟上の和解
- 訴訟上の和解
- Sec.1
■訴訟上の和解の要件
当事者の意思により訴訟を終了させる点で訴訟上の和解は請求の放棄・認諾と共通し、要件の点でも放棄・認諾に準じる。
① 当事者が訴訟物についての係争利益を自由に処分できる場合であること
② 和解の内容をなす権利・法律関係が現行法上許容されるものであり、公序良俗に違反しないこと
③ 請求についての訴訟要件を具備すること
④ 当事者が請求(訴訟物)に関して互いに譲歩すること
譲歩の程度は問わないため、分割払いを認めたり、訴訟費用を相手方に譲歩させることでもよい。また、当事者以外の第三者を加えて和解してもよい。
⑤ 訴訟が係属すること
この点で裁判外の和解と区別される。
⑥ 当事者に訴訟能力があり、代理人に特別授権があること(民訴法32条2項1号、55条2項2号)
■訴訟上の和解の時期と方式
(1) 時期
裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官もしくは受託裁判官に和解を試みさせることができる(民訴法89条)。したがって、判決言渡後であっても確定前であれば和解することができる。また、最高裁(上告審)において和解をすることもできる。
(2) 方式
① 期日における和解
訴訟上の和解は、期日において、当事者双方が口頭で陳述して行う。弁論準備手続や準備的口頭弁論などの争点整理手続でも、口頭弁論終結後でもよい。口頭弁論終結後に訴訟上の和解を試みる場合でも必ずしも弁論を再開する必要はなく、和解期日を設けることによって和解を成立させることができる。和解自体は裁判ではないため、純粋な和解期日を指定すれば非公開で当事者が対席することなく、裁判官が個別に面接する方法によって行うこともできる。
② 和解条項案の書面による受諾制度
当事者が遠隔地に居住していることその他の事由により期日の出頭することが困難であると認められる場合において、その当事者があらかじめ裁判所又は受命裁判官もしくは受託裁判官から提示された和解条項案を受諾する旨の書面を提出し、他の当事者が口頭弁論期日(又は弁論準備手続期日、和解期日)に出頭してその和解条項を受諾したときは、当事者間に和解が調ったものとみなされる(民訴法264条)。必ずしも当事者双方が和解のため期日へ出頭する必要はないとして、出頭の要件を緩和したものである。なお、当事者双方が出頭できない場合には適当されない。
③ 和解条項告知制度
裁判所又は受命裁判官もしくは受託裁判官は、当事者の共同の申立てがあるときは、事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる(民訴法265条1項)。この申立ては書面でしなければならず、その書面には和解条項に服する旨記載しなければならない(同条2項)。
これによって、裁判所等は、当事者の意見を聴いたうえで和解条項を定めることができ、その定めを当事者双方に告知することにより、和解が調ったものとみなされる(同条3項5項)。当事者は、この告知前に限り、申立てを取り下げることができ、この場合は相手方の同意を要しない(同条4項)。
④ 和解条項案の書面による受諾制度、和解条項告知制度の適用
上記②③の制度は、訴訟上の和解についてのみ適用され、起訴前の和解には適用されない(民訴法275条4項)。