- 民事訴訟法ー14.訴訟の終了
- 3.請求の放棄・認諾
- 請求の放棄・認諾
- Sec.1
1請求の放棄・認諾
■請求の放棄・認諾の意義
請求の放棄とは、原告の自分の請求に理由のないことを認める陳述をいう。
逆に、請求の認諾とは、被告が原告の請求に理由のあることを認める陳述をいう。
これにより当事者間の紛争はなくなり、裁判所は審理を続ける必要がなくなり、調書に記載することによって訴訟は終了する。請求の放棄の場合は被告の勝訴に、逆に請求の認諾の場合には、原告の勝訴となる。
■請求の放棄・認諾の要件
① 当事者が訴訟物についての係争利益を自由に処分できる場合であること
放棄・認諾を行うということは、当事者による訴訟物たる権利関係の処分たる実質を有するため、当事者間でその係争利益を自由に処分できることが必要である。
職権探知主義が採用される事件については、原則として放棄•認諾は許されない。当事者の自由な処分を認められず裁判所が真実を探知すべきとされる係争利益、例えば、少数株主による株式会社解散請求など会社関係訴訟では、請求の認諾は許されない。原告が勝訴した場合、対世効を有するからである。
cf 株主総会決議取消しの訴えにおいて請求の放棄をすることができる。
原告敗訴の場合には対世効が生じないからである。
また、人事訴訟の多くは、認諾も放棄も認められない(ex 認知の訴え)。ただし、例外的に、離婚(離縁)の訴えに係る訴訟では、請求の放棄が認められており、また請求の認諾についても一定の制限の下ですることができる(人訴法37条、44条)。
② 認諾によって認められることになる訴訟物たる権利関係自体が、法律上存在の許されないものでないこと、又は公序良俗に反するものでないこと
請求の認諾をすると、確定判決と同一の効力を生じ、強制執行によって権利が強制的に実現される。そのため、強制実現を認めるのが好ましくない場合は請求の認諾は認められない。
例えば、法律上認められない物権の確認請求や、賭博の金銭支払請求に対する認諾は認められない。
③ 請求についての訴訟要件を具備すること
確定判決と同一の効力が生じるため、訴訟要件を具備することを要する。ただし、被告の利益保護や紛争解決の実効性を確保するための訴訟要件については不要と解される。
④ 訴訟能力・代理権が存在すること
請求の放棄・認諾は確定判決と同一の効力を生じるため、当事者保護のため、訴訟能力の具備を要し、また代理の場合には、特別の授権又は委任を要する。
■請求の放棄・認諾の時期と方式
(1) 時期
請求の放棄・認諾は訴訟係属中なしうる。判決言渡し後であっても、確定前なら放棄・認諾することができ、上告審でも可能である(大S2.12.19)。
(2) 方式
① 裁判所に対する口頭による陳述
口頭弁論期日、弁論準備手続期日、和解期日における口頭の陳述によって行う(民訴法266条1項)。裁判所に対する陳述であることから、相手方が欠席の場合でもすることができる。
なお、請求の放棄・認諾のいずれについても条件を付すことはできない。また、請求の放棄をするのに相手方の同意は不要である。
② 書面の提出
期日に出頭しない当事者が、それ以前に請求の放棄・認諾をする旨の書面を提出していたときは、裁判所はその旨の陳述がなされたものとみなすことができる(民訴法266条2項)。放棄・認諾のためだけに出頭する必要がないとしたものである。