- 民事訴訟法ー11.証拠方法
- 8.証拠保全
- 証拠保全
- Sec.1
1証拠保全
■意義
証拠保全とは、本来の証拠調べの時期まで待っていてはその証拠調べが不可能ないし困難となるおそれがある場合に行われる証拠調べをいう(民訴法234条)。例えば、証人の死亡、海外移住、文書の消失、検証物の現状変更の可能性があるような場合に必要性がある。
■証拠保全の要件
あらかじめ証拠調べをしておかなければ、その証拠を使用することが困難となる事情(証拠保全の必要性)があることである(民訴法234条)。申立人はこの保全事由を疎明しなければならない(民訴規153条)。
■証拠保全手続
(1) 申立て
① 原則
証拠保全は原則として、当事者の申立てによる(民訴法234条)。証拠保全の申立ては、相手方を指定することができない場合においてもすることができる。この場合、裁判所は相手方となるべき者のために特別代理人を選任することができる(民訴法236条)。
② 例外
裁判所は、必要があると認めるときは、訴訟係属中であれば、職権で、証拠保全の決定をすることができる(民訴法237条)。
(2) 管轄裁判所
① 訴訟継続後
訴え提起後における証拠保全の申立ては、その証拠を使用すべき審級の裁判所にしなければならない。ただし、最初の口頭弁論の期日が指定され、又は事件が弁論準備手続もしくは書面による準備手続に付された後口頭弁論の終結に至るまでの間は、受訴裁判所にしなければならない(民訴法235条1項)。
つまり、口頭弁論の期日が指定されずかつ事件が弁論準備手続または書面による準備手続に付される前は、「その証拠を使用すべき審級の裁判所」が、最初の口頭弁論期日が指定されるなど、受訴裁判所が実質的に審理を行っている場合は「受訴裁判所」が証拠保全手続の管轄裁判所になるということである。
② 訴訟係属前又は訴訟係属後であっても急迫な事情がある場合
尋問を受けるべき者、文書の所持者の居所、検証物の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所にしなければならない(民訴法235条2項3項)。
証拠保全の申立ては訴え提起前になされるのが通常であるが、急迫の事情がある場合には訴え提起後であっても尋問を受けるべき者の居所又は検証物の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所に証拠保全の申立てをすることができるのである。