• 民事訴訟法ー11.証拠方法
  • 4.鑑定
  • 鑑定
  • Sec.1

1鑑定

堀川 寿和2022/02/03 09:37

意義

 鑑定人とは、裁判所の命令により、特別の学識経験に基づく知識ないし判断を報告する第三者をさし、鑑定とは、特別の学識経験のある第三者からその専門知識や判断を報告させ、裁判官の判断を補充するための証拠調べである。

鑑定義務

 鑑定に必要な学識経験を有する者は、鑑定をする義務を負う(民訴法212条1項)。

 具体的には、「出頭義務」「宣誓義務」「鑑定結果の報告義務」を負い、証人と同じくこれを怠ると制裁が加えられるが、勾引はできない。

鑑定手続

(1) 順序

 鑑定手続は原則として証人尋問に関する規定を準用する(民訴法216条)。したがって、「鑑定の申出」→「鑑定人の指定」→「呼出し」→「人定」→「宣誓」→「鑑定意見の報告」の順で行われる。

 

(2) 鑑定人の指定

 鑑定人は、受訴裁判所、受命裁判官又は受託裁判官が指定する(民訴法213条)。

 したがって、当事者は鑑定の申出をする際に鑑定人を指定する必要はない。

cf 証人尋問の申出は証人を指定してしなければならない。

当事者尋問のように職権で開始されることもない。

 

(3) 宣誓

 鑑定人の宣誓は証人に準ずる(民訴法216条)が、書面宣誓が認められている(民訴規131条)。

 鑑定の結果は、通常、鑑定書の提出によって行われため、宣誓のためにわざわざ鑑定人を出廷させるのは無意味だからである。そこで宣誓書を裁判所に提出させる方式によって宣誓することが認められている。

 

(4) 鑑定意見の陳述

 裁判長は、鑑定人に、書面又は口頭で、意見を述べさせることができる(民訴法215条1項)。

裁判所は、鑑定人に意見を述べさせた場合において、当該意見の内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するために必要があると認めるときは、申立て又は職権で鑑定人に更に意見を述べさせることができる(同条2項)。

cf 証人尋問

 証人尋問は裁判所が相当と認める場合であって当事者に異議がないときは、証人尋問に代えて書面の提出ができる(民訴法205条)が、鑑定人の尋問については尋問に代わる書面の提出は認められない(民訴法216条では、205条を準用していない。)。そもそも鑑定については書面陳述(尋問に代わる書面の提出)が認められており(民訴215条1項)、尋問に代わる書面の提出を認める実益が乏しいからである。

 

(5) 鑑定人質問

 裁判所は、鑑定人に口頭で意見を述べさせる場合には、鑑定人が意見の陳述をした後に、鑑定人に対し質問することができる(民訴法215条の2第1項)。この質問は、「裁判長」→「その鑑定申出をした当事者」→「他の当事者」の順序でするが、裁判長は、適当と認めるとき当事者の意見を聴いてこの順序を変更することができ、(同条2項3項)当事者が順序の変更につき異議を述べたときは、裁判所は決定で、その異議について裁判をする(同条4項)。

 

(6) テレビ会議システムの方法による意見陳述

 裁判所は、鑑定人に口頭で意見を述べさせる場合において、鑑定人が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、隔地者が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することができる方法によって、意見を述べさせることができる(民訴法215条の3)。