- 民事訴訟法ー10.事実認定
- 4.証拠調べの手続
- 証拠調べの手続
- Sec.1
1証拠調べの手続
■証拠の申出
(1) 証拠の申出の意義
裁判所に対し、特定の証拠方法の取調べを要求する申立てを証拠の申出という。弁論主義の下では、証拠調べは当事者の申し出た証拠について行われるのが原則である。しかし、次のような場合には例外的に、職権証拠調べが認められる。
① 当事者尋問(民訴法207条1項)
② 必要な調査の嘱託(民訴法186条)
③ 訴訟係属中の証拠保全(民訴法237条)
④ 職権探知主義が採用される人事訴訟(人訴法20条)
(2) 申出の時期
証拠の申出は、口頭弁論期日において、訴訟の進行状況に応じて適切な時期に提出しなければならない(民訴法156条)。一種の攻撃防御方法だからである。
弁論準備手続期日においてもなされるほか、口頭弁論期日前にすることもできる(民訴法180条2項)。あらかじめ文書提出命令の申立てや証人の呼出しをするなどして、期日における証拠調べを可能にするためである。
(3) 申出の方式
証拠の申出は証明すべき事実を特定してしなければならず(民訴法180条1項)、かつ証明すべき事実と証拠方法との関係を具体的に明示してしなければならない。
また、相手方に期日の準備をさせるため、証拠申出を記載した書面を相手方に直送しなければならない(民訴規99条)。証人及び当事者本人尋問の申出は、できる限り一括してしなければならない(民訴規100条)。
■証拠の申出の撤回
(1) 証拠調べ開始前
申出当事者からいつでも撤回することができる。
(2) 証拠調べ開始後
相手方の同意ある場合のみ撤回できる。
(3) 証拠調べ終了後
撤回できない(最S32.6.25)。裁判官に生じた心証を廃除させることは自由心証主義に反するからである。当事者双方の合意で証拠調べ終了後に当該証拠を用いないこととする合意をしたとしても裁判所は当該合意に拘束されることはない。自由心証主義による。
cf 証拠調べ終了前であれば当該合意は有効であり裁判所も拘束することと比較。
判例 |
(最S32.6.25) |
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裁判所がいったん証人尋問を終了した後は、その申出を撤回することはできないから、尋問の結果を証拠として採用しても違法ではない。 |
■証拠の採否
裁判所は、当事者が申し出た証拠を常に取り調べる必要はなく、裁判所の裁量に任される(民訴法181条1項)。
(1) 却下決定
① 申し出た証拠が不適法な場合(民訴法181条1項)
取り調べる必要はない。例えば、証拠申出の方式(民訴法180条)を欠くような場合である。
② 申し出た証拠が不必要な場合
取り調べる必要はない(民訴法181条1項)
例えば、証人が3人いて2人調べた時点で裁判所が十分に心証形成できたような場合には、もう1人を調べる必要はない。
③ 証拠調べについて不定期間の障害がある場合(民訴法181条2項)
証拠調べをしないことができる。
④ 時機に遅れた証拠申出
裁判所の裁量で申出を却下されることがある(民訴法157条)。
(2) 証拠調べの決定の取消し・変更
却下決定・証拠調べの決定は、訴訟指揮上の裁判であるから、いつでも取消し・変更することができ(民訴法120条)、文書の提出命令の申立ての場合のように特別の定め(民訴法223条7項)がある場合を除き、これに対する独立の不服申立ては許されない。
原 則 |
証拠決定に対して独立の不服申立てをすることはできない。 |
例 外 |
次の証拠決定に対しては即時抗告をすることができる。 ①文書提出命令の申立てに関する決定(民訴法223条7項) ②対照用文書の提出•送付に関する決定(民訴法229条2項、223条7項) ③検証物の提示・送付に関する決定(民訴法232条1項、223条7項) |