- 民事訴訟法ー7.口頭弁論
- 2.口頭弁論における審理の諸原則
- 口頭弁論における審理の諸原則
- Sec.1
1口頭弁論における審理の諸原則
■直接主義
(1) 直接主義の意義
直接主義とは、判決をする裁判官が自ら当事者の弁論を聞き、証拠調べを行う主義をいう。他の裁判官が行った弁論の聴取、証拠調べの結果を判決の資料とする間接主義に対する。
(2) 直接主義の原則
民訴法249条1項で、「判決はその基本となる口頭弁論に関与した裁判官がする。」と規定しており、直接主義を原則としている。
判例 |
(最S29.9.15) |
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基本となる口頭弁論とは、口頭弁論に終始関与した裁判官という意味ではなくて、最終の口頭弁論のみをいう。 |
(3) 直接主義の緩和
裁判官が交替した場合、直接主義の考えを貫けば、新しい裁判官の元で一から口頭弁論をやり直すべきところであるが、それでは著しく訴訟を遅滞させ訴訟経済に反することから、次の場合、直接主義を緩和している。
① 弁論の更新
口頭弁論の途中で裁判官が交替した場合、当事者が従前の口頭弁論の結果又は弁論準備手続の結果を新しい裁判官の面前で陳述すれば足りるとする(民訴法249条2項)。判例(最S31.4.13)によると、当事者の一方がすれば足りるが、当事者双方が欠席した場合は弁論の更新はできない。
cf
判例 |
(最S26.3.29) |
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合議体で審理していた事件について、合議体で審理及び裁判する旨の決定が取り消され、その中の1人の裁判官が単独で審理を進めることとなった場合には、当事者は従前の口頭弁論の結果を陳述する必要はない。単独で審理を進める裁判官は従前の審理に加わっていたからである。 |
② 証人尋問の再施
単独裁判官が代わった場合又は合議体の裁判官の過半数が代わった場合において、その前に尋問した証人について、当事者が更に尋問の申出をしたときは、裁判所は、その尋問をしなければならない(民訴法249条2項)。
■間接主義を採用する場合
民訴法は直接主義を貫くことが不可能もしくは著しく困難な場合に、例外的に間接主義を認める。
(1) 外国における証拠調べ(民訴法184条)
外国においてすべき証拠調べは、その国の管轄官庁又はその国に駐在する日本の大使、公使もしくは領事に嘱託してしなければならないとされている。
(2) 受命裁判官・受託裁判官による証拠調べ(民訴法185条、195条)
裁判所は相当と認めるときは受命裁判官又は受託裁判官に証拠調べをさせることができる(民訴法185条1項)。「受命裁判官」とは、裁判長に指名されて証拠調べや証人尋問等を行う合議体の一員たる裁判官のことであり、「受託裁判官」とは、受訴裁判所からの嘱託によりそれらを行う他の裁判所の裁判官のことである。
■口頭主義と書面主義
口頭主義とは、弁論や証拠調べをはじめとする訴訟行為を口頭で行う主義をいう。逆に、それらを書面で行わせるのが書面主義である。口頭主義の下では、口頭で陳述されたもののみが訴訟資料とされる。現行民事訴訟法は、口頭主義を原則とするが、口頭主義を補充するために一部で書面主義が採用されている場面もある。例えば、判決手続については口頭弁論が必要的であるため口頭主義が採用されているが、決定・命令手続については口頭弁論が任意的であり、当事者が提出する書面のみによることができる。また、上告審では、書面審理だけで上告を却下又は棄却することが認められている(民訴法317条1項、319条)。