- 民事訴訟法ー4.訴訟の開始
- 2.訴えの提起
- 訴えの提起
- Sec.1
1訴えの提起
■訴え提起の方式
訴えの提起は、一定の事項を記載した訴状を裁判所に提出してするのが原則である(民訴法133条1項)。訴状には、少なくとも民訴法133条2項で定める記載事項を記載し、訴額に応じて所定額の印紙を貼り、被告に送達するために被告の数だけ副本を添え、さらに送達費用を予納しなければならない。なお、簡易裁判所では、簡易な手続で処理するため口頭で訴えの提起をすることができる(民訴法271条)。
■訴状の記載事項
(1) 必要的記載事項
訴えは、「請求」「裁判所」「当事者」の3つの要素から成立しているため、訴状には必ず「当事者」と請求を特定するための事項たる「請求の趣旨」と、必要に応じて「請求の原因」を記載しなければならない。これらを訴状の必要的記載事項といい、これらの事項が記載されているか否かは、裁判長による審査の対象となる(民訴法137条1項)。
① 当事者及び法定代理人
当事者の表示は、誰が原告で誰が被告であるかを特定できる程度の表示を要する。自然人については氏名と住所を、法人などの団体については名称と所在地を記載する。当事者が訴訟無能力者(未成年者•成年被後見人)である場合には、法定代理人の表示を要し、また法人などの団体の場合には代表者を記載することを要する(民訴法37条)。現実に訴訟を追行するのが誰であるか明らかにするためである。なお、訴訟代理人を選任した場合、訴状には訴訟代理人の氏名を記載するのが通例だが、必要的記載事項とはされていない。
② 請求の趣旨
請求の趣旨とは、訴えによって求める判決内容の結論的・確定的な表示をいい、通常は請求認容判決の主文に対応する。
(ex)給付の訴え 「被告は原告に対し金100万円を支払えとの判決を求める。」
確認の訴え 「別紙目録記載の土地は原告の所有に属することを確認するとの判決を求める。」
形成の訴え 「原告と被告とを離婚するとの判決を求める。」
③ 請求の原因
請求の趣旨の記載を補足して、審判の対象たる訴訟物である請求を特定するために必要な記載をいう。請求の趣旨のみの記載で訴訟物が特定できる場合には請求の原因の記載は必要がない。
例えば、金銭支払いの訴えの場合、請求の趣旨で「被告は原告に対し金100万円を支払え」と表示しただけでは、原告・被告間で複数の金銭債権が存在する場合、それだけでは請求が特定されないことから、請求の原因の記載によって、複数の債権のうちどの債権を特定する必要がある。
cf 確認の訴えでは、「別紙目録記載の土地は原告の所有に属することを確認する。」とする請求の趣旨のみで請求が特定することから、請求原因の記載は必要ない。
(2) 任意的記載事項
① 意義
訴状には必要的記載事項のほか、請求を理由づける事実や証拠方法なども記載することができ、これを任意的記載事項という。任意的記載事項については、その記載がなくても訴状が却下されることはない。
② 請求を理由づける事実や証拠方法
実務上は、請求の趣旨や請求の原因とあわせて「請求を理由づける事実」や「証拠方法」が記載される慣例となっており、民事訴訟規則によって、訴状には請求の趣旨・原因のほか、「請求を理由づける事実(主要事実)」を具体的に記載し、かつ立証を要する事由ごとに当該事実に関連する事実で重要なもの(間接事実)及び証拠を記載しなければならないとされている(民訴規53条1項)。
■訴えに対する裁判所の措置
訴状が裁判所に提出されたら、次の手続を経ていくことになる。
「裁判長の訴状審査」 ⇒ 「訴状の送達」 ⇒ 「口頭弁論期日の指定・当事者の呼出し」
(1) 裁判長の訴状審査
① 裁判長による訴状審査の対象
(イ)必要的記載事項を具備しているか。
(ロ)訴額に応じた印紙が貼用されているか。
② 補正命令
訴状に不備があれば、裁判長は相当期間を定めて原告に補正を命ずる。手数料の不納付又は不足の場合も同様である。
③ 訴状の却下
原告が補正命令に応じないときは裁判長は命令で訴状を却下しなければならない(民訴法137条2項)。この訴状却下命令に対しては、即時抗告をすることができる(同条3項)。
(2) 訴状の送達
訴状が適式であるか又は補正されれば裁判長は訴状の副本を被告に送達する(民訴法138条1項)。
(3) 口頭弁論期日の指定・当事者の呼出し
訴状の送達とともに裁判長は口頭弁論期日を指定し、当事者双方を呼び出さなければならない(民訴法138条2項)。
(4) 訴えの却下
① 補正が不能な場合
訴えが不適法でその不備を補正することができないときは、裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、訴えを却下することができる(民訴法140条)。
② 呼出費用の予納がない場合
裁判所は、当事者に対する期日の呼出しに必要な費用の予納を相当の期間を定めて原告に命じた場合において、その予納がないときは、被告に異議がない場合に限り、決定で訴えを却下することができる(民訴法141条1項)。