- 商業登記法ー47.一般社団法人に関する登記
- 1.一般社団法人に関する登記
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1一般社団法人に関する登記
■一般社団法人の意義
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律に基づいて設立された社団法人のことを一般社団法人という。現在では、公益性の有無に関わらず一般社団法人・一般財団法人という法人格を取得することができ、同窓会や町内会などといった団体で法人という組織形態をとることが可能である。なお、法人となれば、その団体には法人格が付与され、団体の名義で不動産の登記や銀行□座の開設も可能となるメリットがある。
■一般社団法人の機関
(1) 一般社団法人の機関
一般社団法人には、社員総会と理事が必ず置かれる。また、一般社団法人は、定款の定めによって、理事会、監事、会計監査人を置くことができる。(一般法人法60条)
株式会社と比較すると、社員総会は株主総会に、理事は取締役に、理事会は取締役会に、監事は監査役に相当する機関である。なお、会計参与に相当する機関や監査役会に相当する機関は存在しない。
また、取締役会設置会社と同じような用語として、理事会設置一般社団法人という用語が使われる。(一般法人法161条)会計監査人設置会社に相当するのは、会計監査人設置一般社団法人である。(一般法人法15条2項2号)理事会設置一般社団法人は、監事を置かなければならず、また、会計監査人設置一般社団法人も、監事を置かなければならない。(一般法人法61条)
① 理事
株式会社の取締役と同様に考えればよい。理事の選任、員数、任期、資格等については、ほぼ取締役と同じである。一般社団法人を代表する理事が代表理事である。(一般法人法21条1項)
② 監事
監事は、一般社団法人又はその子法人の理事又は使用人を兼ねることができない。(一般法人法65条2項)なお、株式会社の監査役のように、監事の監査の範囲を会計に関するものに限定することはできない。
③ 会計監査人
会計監査人は、公認会計士又は監査法人でなければならない。(一般法人法68条1項)
(2) 任期
① 理事
理事の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までであり、伸長することはできない。ただし、定款又は社員総会の決議によってその任期を短縮することは可能である。(一般法人法66条)
② 監事
監事の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までであり、伸長することはできない。ただし、定款又は社員総会の決議によってその任期を選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとすることを限度として短縮することは可能である。(一般法人法67条1項)定款によって、任期満了前に退任した監事の補欠として選任された監事の任期を退任した監事の任期の満了する時までとすることができる。(同条2項)
監事を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、監事の任期は当該定款変更の効力が生じた時に満了する。(同条3項)
③ 会計監査人
会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時社員総会の終結の時までであり、任期の満了する定時社員総会において別段の決議がされなかったときは、再任されたものとみなされる。(一般法人法69条1項2項)
会計監査人を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、会計監査人の任期は当該定款変更の効力が生じた時に満了する。(同条3項)
(3) 選任
① 選任機関
役員(理事及び監事をいう。)及び会計監査人は、社員総会の決議によって選任する。(一般法人法63条1項)一般社団法人と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。(同法64条)
② 補欠役員等
役員(理事及び監事をいう。)が欠けた場合又はこの法律もしくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。(一般法人法63条2項)
■一般社団法人の設立
(1) 定款の作成
一般社団法人を設立するには、その社員になろうとする者が、共同して定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。(一般社団及び一般財団法人に関する法律10条、以下、一般法人法という。)したがって、一般社団法人は2名以上で設立する必要があることになる。
(2) 定款の絶対的記載事項
一般社団法人の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。(一般法人法11条1項)
① 目的(*1) ② 名称 ③ 主たる事務所の所在地 ④ 設立時社員の氏名又は名称及び住所 ⑤ 社員の資格の得喪に関する規定 ⑥ 公告方法 ⑦ 事業年度 |
(*1)一般社団法人が収益事業を営むこと自体は可能であり、事業によって利益を得る可能性があれば、当該事業を目的として登記することはできる。つまり、一般社団法人も法人として利益をあげることは可能であるが、そのあがった収益を構成員たる社員に分配することはできない。したがって、社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは、その効力を有しない。(一般法人法11条2項)
(3) 定款の認証
一般社団法人を設立する際に作成した定款(原始定款)は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない。(一般法人法13条)
(4) 設立時役員等の選任
① 選任の必要性
(イ)設立時理事、設立時監事、設立時会計監査人の選任
定款で設立時理事を定めなかったときは、設立時社員は公証人の定款認証を受けた後遅滞なく、設立時理事を選任しなければならない。(一般法人法15条1項)また、設立しようとする一般社団法人が次に掲げるものである場合において、定款で定めなかったときは、設立時社員は、公証人の認証の後遅滞なく、次の者を選任しなければならない。(一般法人法15条2項)
1. 監事設置一般社団法人 設立時監事 2. 会計監査人設置一般社団法人 設立時会計監査人 なお、設立しようとする一般社団法人が理事会設置一般社団法人である場合には、設立時理事は3人以上でなければならない。(一般法人法16条1項) |
(ロ)設立時代表理事の選任
設立時理事は、設立しようとする一般社団法人が理事会設置一般社団法人である場合は、設立時理事の中から一般社団法人の設立時代表理事を選定しなければならない。(一般法人法21条1項)
② 選任方法
設立時社員は、各1個の議決権を有する。ただし、定款で別段の定めをすることは可能である。(一般法人法17条2項)設立時理事、監事、会計監査人等の選任は、設立時社員の議決権の過半数をもって決定する。(一般法人法17条1項)
(5) 設立時理事等による調査
設立時理事(設立しようとする一般社団法人が監事設置一般社団法人である場合にあっては、設立時理事及び設立時監事)は、その選任後遅滞なく、一般社団法人の設立の手続が法令又は定款に違反していないことを調査しなければならない。(一般法人法20条1項)
設立時理事(又は設立時監事)は、その調査により一般社団法人の設立の手続が法令もしくは定款に違反し、又は不当な事項があると認めるときは、設立時社員にその旨を通知しなければならない。(同条2項)
(6) 登記申請手続
① 登記期間
一般社団法人の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、次に掲げる日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければならない。
1. 設立時理事(及び設立時監事)の調査が終了した日 2. 設立時社員が定めた日 |
② 登記事項
登記事項(一般法人法301条2項)
一般社団法人の設立登記の際、次の事項を登記しなければならない。
1. 目的 2. 名称 3. 主たる事務所及び従たる事務所の所在場所 4. 一般社団法人の存続期間又は解散の事由についての定款の定めがあるときは、その定め 5. 理事の氏名 6. 代表理事の氏名及び住所 7. 理事会設置一般社団法人であるときは、その旨 8. 監事設置一般社団法人であるときは、その旨及び監事の氏名 9. 会計監査人設置一般社団法人であるときは、その旨及び会計監査人の氏名又は名称 10. 一時会計監査人の職務を行うべき者を置いたときは、その氏名又は名称 11. 役員等の責任の免除についての定款の定めがあるときは、その定め 12. 非業務執行理事等が負う責任の限度に関する契約の締結についての定款の定めがあるときは、その定め 13. 貸借対照表等の公告を電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることとするときは、その不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの 14. 公告方法 15. 公告方法が電子公告であるときは、次に掲げる事項 イ 電子公告により公告すべき内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの ロ 予備的公告方法の定めがあるときは、その定め |
③ 申請人
一般社団法人の設立の登記は、当該一般社団法人を代表すべき者の申請によってする。(一般法人法318条1項)
④ 添付書類
一般社団法人の設立登記の申請書には、法令に別段の定めがある場合を除き、次に掲げる書面を添付しなければならない。(一般法人法318条2項)
(イ)定款 (ロ)設立時理事が設立時代表理事を選定したときは、これに関する書面 (ハ)設立時理事、設立時監事及び設立時代表理事が就任を承諾したことを証する書面 (ニ)設立時理事又は設立時監事の本人確認証明書 なお、登記の申請書に印鑑証明書を添付した場合、印鑑証明書を添付した者の本人確認証明書の添付は不要である。(一般社団規3条、商登規61条5項ただし書) (ホ)設立時会計監査人を選任したときは、次に掲げる書面 a) 就任を承諾したことを証する書面 b) 設立時会計監査人が法人であるときは、当該法人の登記事項証明書 ただし、当該登記所の管轄区域内に当該法人の主たる事務所がある場合又は申請書に当該法人の会社法人等番号を記載した場合は不要である。 c) 設立時会計監査人が法人でないときは、その者が公認会計士であることを証する書面 (ヘ)登記すべき事項につき設立時社員全員の同意又はある設立時社員の一致を要するときは、その同意又は一致があったことを証する書面(一般法人法318条3項) (ト)代理人によって申請する場合、「委任状」 |