- 商業登記法ー45.登記の更正
- 1.登記の更正
- 登記の更正
- Sec.1
1登記の更正
■更正登記の意義
(1) 更正登記によることができる場合
登記の更正とは、錯誤又は遺漏により事実と合致しない登記がなされた場合に、それを正しい登記に訂正することをいう。登記の更正は、登記に錯誤又は遺漏がある場合に限り認められる。
「錯誤」の例としては、資本金の額を100万円と登記すべきところを、1000万円としてしまったような場合である。
「遺漏」の例としては、支配人の登記において、「支配人の住所・氏名」は登記されたが、「支配人を置いた営業所」の登記がなされなかったような場合である。
cf 取締役A・Bを選任したのに、取締役Aのみについての就任登記をした場合、取締役Bの就任登記については登記懈怠である、遺漏ではないため、更正登記によることはできない。登記の遺漏とは、一体としてなすべき登記事項の一部に漏れがある場合であるからである。
cf 取締役Aが平成30年6月25日に就任した旨を同月26日に申請したが、その就任年月日に錯誤があったとして、同月27日に就任したとする更正登記をすることはできない。25日の時点では、登記事項は未だ不存在であり、一旦抹消して、新たに6月27日付での就任登記をすべきである。
(2) 錯誤・遺漏の原因
登記の錯誤又は遺漏は、「登記官の過誤によって生じる場合」と、「申請人の過誤によって生じる場合」がある。登記官の過誤による場合は、職権更正事由となる。
■申請による更正
当事者は、登記を受けた後、その登記に錯誤又は遺漏があることを発見したときは、いつでもその更正を申請することができる。(商登法132条1項)
① 申請人
更正の対象となる登記をした当事者である。
② 登記期間
更正登記の申請については、登記期間の定めはない。
③ 登記の事由
「錯誤による更正」又は「遺漏による更正」等と記載する。
④ 登記すべき事項
更正後の事項を記載する。ない、更正の年月日の記載は不要である。
⑤ 添付書面
(イ)錯誤又は遺漏があることを証する書面
更正登記の申請書には、「錯誤又は遺漏があることを証する書面」を添付しなければならないのが原則である(商登法132条2項)しかし、登記に錯誤又は遺漏があることがその登記の申請書又は添付書面により明らかであるときは、更正の申請書には、錯誤又は遺漏があることを証する書面を添付することを要しない。なお、この場合には、更正の申請書にその旨を記載しなければならない。(商登規98条)
* 申請書の記載が添付書面の記載と違っていて誤った登記を申請してしまった場合も、添付書面によって錯誤が判明するため、「錯誤を証する書面 平成何年何月何日申請の変更登記申請書に添付の株主総会議事録を援用する」と記載すれば足りる。
* 氏・名・住所の更正についても、錯誤又は遺漏があることを証する書面の添付は要しない。(商登法132条2項ただし書)そもそも役員の就任登記の際に氏名・住所等を住民票、戸籍謄本等で確認しているわけではないからである。
(ロ)代理人によって申請する場合は、「委任状」
⑥ 登録免許税
(イ)本店所在地
金2万円(登録免許税別表一、二十四(一)ネ)
(ロ)支店所在地
金6000円(登録免許税別表一、二十四(ニ)ロ)
* 職権更正によるべきところを申請によって更正することもでき、その場合は非課税である。
錯誤による更正登記 申請書 記載例 (本店所在地)
登記の事由
錯誤による更正
登記すべき事項
取締役甲野太郎の氏名を甲野太朗と更正
登録免許税
金2万円
添付書類
(錯誤又は遺漏があることを証する書面 1通)
委任状 1通
■職権による更正
(1) 意義
錯誤又は遺漏が登記官の過誤によるものであるときは、登記官は、遅滞なく、監督法務局又は地方法務局長の許可を得て、登記の更正をしなければならない。(商登法133条2項)これを職権更正登記という。
(2) 職権更正の対象
錯誤又は遺漏が登記官の過誤によるとは、登記官が申請書の記載に従って登記をしなかったために登記に錯誤があることとなった場合をいう。したがって次の場合には、職権更正によることはできない。
① 申請書の記載と添付書面の記載にくい違いがあった場合に、登記官がそれを看過して申請書に従って登記したため登記に錯誤があることとなった場合 ② 申請書の記載と登記記録との不一致を看過して申請書の記載に基づいて登記したため錯誤を生じた場合 |
いずれも申請人の過誤であって、登記官による過誤とはいえないからである。
(3) 法務局又は地方法務局の長の許可
登記官は、遅滞なく、監督法務局又は地方法務局の長の許可を得て、登記の更正をしなければならない。(商登法133条2項)
(4) 登録免許税
非課税である。(登録免許税法5条12号)