- 商業登記法ー44.支配人の登記
- 1.支配人の登記
- 支配人の登記
- Sec.1
1支配人の登記
■支配人の選任の登記
(1) 意義
支配人とは、営業主たる商人(会社及び外国会社を除く。)に代わって、その営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をなす権限を有する商業使用人をいう。(商法21条1項)
(2) 支配人の選任
商人は営業所における営業を行わせるため、支配人を選任することができる。(商法20条)つまり支配人は営業主たる商人が選任する。
(3) 支配人の資格
支配人は、商人の代理人であるため、意思能力を有する自然人であればよく、行為能力者である必要はない。
(4) 支配人の代理権
支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。(商法21条1項)支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。(同条2項)なお、支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。(同条3項)
(5) 登記申請手続
① 実体手続
商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならない。(商法22条)
なお、商号の登記をしていない場合や、商号の登記をしていない営業所での支配人の選任の場合にも支配人の登記は必要である。
② 登記期間
支配人選任登記についても、登記期間の定めはない。
③ 申請人
支配人の登記は、営業主たる商人の申請によって行う。支配人自身が申請することはできない点に注意!
④ 登記すべき事項
商人の支配人の登記において登記すべき事項は、次のとおりである。(商登法43条1項)
1. 支配人の氏名及び住所 2. 商人の氏名及び住所 3. 商人が、数個の商号を使用して数種の営業をするときは、支配人が代理すべき営業及びその使用すべき商号(*1) 4. 支配人を置いた営業所 |
(*1)これに対し会社の支配人の登記においては会社が使用する商号は1個に限られるので、支配人が代理すべき営業およびその使用すべき商号について登記することはできない。
⑤ 添付書面
代理人によって申請する場合の「委任状」以外は、不要である。
cf これに対し、会社の支配人の選任登記の申請書には支配人の選任を証する書面として「取締役会議事録」又は「取締役の過半数の一致を証する書面」の添付を要する。
⑥ 登録免許税
(イ)本店所在地
申請1件につき、金3万円(登録免許税別表一、二十九(一)ロ)
(ロ)支店所在地
申請1件につき、金9000円(登録免許税別表一、二十九(ニ)イ)
⑦ 印鑑の提出の要否
個人商人は、その印鑑を登記所に提出しなければならない(商登法20条)が、支配人の印鑑の提出は義務づけられていない。しかし、支配人も印鑑を届け出ることができ(商登法12条1項、商登規9条)、印鑑証明書の交付を受けることができる。
個人商人の支配人選任の登記 申請書 記載例 (本店所在地)
支配人の氏名及び住所 何県何市何町何丁目何番何号
甲野 一郎
営業所 何県何市何町何丁目何番何号
登記の事由
支配人選任
登記すべき事項
支配人の氏名及び住所
何県何市何町何丁目何番何号
甲野 一郎
商人の氏名及び住所
甲野 太郎
支配人を置いた営業所
何県何市何町何丁目何番何号
登記記録に関する事項 新設
登録免許税
金3万円
添付書類
委任状 1通
完了後の登記記録
支配人の氏名及び住所 |
何県何市何町何丁目何番何号 甲野 一郎 |
商人の氏名及び住所 |
何県何市何町何丁目何番何号 甲野 太郎 |
支配人を置いた営業所 |
何県何市何町何丁目何番何号 |
登記記録に関する事項 |
新設 平成何年何月何日登記 |
■支配人の変更登記
(1) 意義
支配人を置いた営業所を、他の管轄区域内へ移転したときは、その移転登記をしなければならない。
(2) 登記申請手続
① 登記期間
登記期間の定めはない。
② 登記すべき事項
(イ)他の管轄登記所への移転の場合
a) 旧所在地
営業所の移転登記
b) 新所在地
商登法43条1項に掲げる事項
(ロ)同一登記所管轄内への移転の場合
a) 営業所移転の旨及びその年月日
b) 新営業所
③ 添付書面
(イ)他の管轄登記所への移転の場合
a) 旧所在地
代理人によって申請する場合の「委任状」以外は、不要である。
b) 新所在地
「旧所在地で登記をしたことを証する書面(登記事項証明書)」及び代理人によって申請する場合の「委任状」
(ロ)同一登記所管轄内への移転の場合
代理人によって申請する場合の「委任状」以外は、不要である。
④ 登録免許税
(イ)旧所在地
金6000円(登録免許税別表一、二十九(一)、ホ)
(ロ)新所在地
金6000円(登録免許税別表一、二十九(一)、ホ)
■支配人の代理権の消滅の登記
(1) 意義
支配人の代理権が、支配人の死亡、辞任、解任等によって消滅したときは、代理権の消滅の登記をしなければならない。(商登法43条2項、29条2項)
なお、支配人の登記をした商人が死亡した場合、支配人の代理権は消滅しないため、支配人の代理権消滅の登記は不要である。
(2) 登記申請手続
① 申請人
営業主の申請による。例えば、支配人の登記のなされた支配人が死亡した場合、その登記をした商人は支配人の代理権消滅の登記をしなければならない。
② 登記すべき事項
「支配人の代理人が消滅した旨、その事由及び年月日」である。
③ 添付書面
代理人によって申請する場合の「委任状」以外は、不要である。
④ 登録免許税
(イ)本店所在地
金3万円(登録免許税別表一、二十九(一)、ホ)
(ロ)支店所在地
金9000円(登録免許税別表一、二十九(ニ)、イ)
支配人の代理権の消滅の登記 申請書 記載例(支配人の解任による退任の場合)(本店所在地)
支配人の氏名及び住所 何県何市何町何丁目何番何号
甲野 一郎
営業所 何県何市何町何丁目何番何号
登記の事由
支配人の代理権消滅
登記すべき事項
平成何年何月何日支配人解任により代理権消滅(*1)
登録免許税
金3万円
添付書類
委任状 1通
(*1)その他、「平成何年何月何日支配人辞任により代理権消滅」
「平成何年何月何日支配人死亡により代理権消滅」
「平成何年何月何日支配人を置いた営業所廃止により代理権消滅」
「平成何年何月何日支配人の破産手続開始により代理権消滅」
「平成何年何月何日商人の破産手続開始決定により代理権消滅」
「平成何年何月何日支配人の後見開始の審判により代理権消滅」
完了後の登記記録
登記記録に関する事項 |
平成何年何月何日支配人解任により代理権消滅 平成何年何月何日登記 平成何年何月何日閉鎖 |