- 商業登記法ー43.後見人の登記
- 1.後見人の登記
- 後見人の登記
- Sec.1
1後見人の登記
■後見人の登記
(1) 意義
後見人の登記とは、後見人が未成年被後見人又は成年被後見人のために営業をする場合において、その旨を公示する登記をいう。
(2) 実態手続
① 後見の登記が必要な場合
後見人が被後見人のために、商法4条の営業(「商行為」「店舗その他これに類似する設備による物品の販売」「鉱業」)を行うときは、その登記をしなければならない。(商法6条1項)
② 後見監督人の許可
後見人が、被後見人に代って営業をなす場合において、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。(民法864条)
(3) 登記申請手続
① 登記期間
商号の登記の場合と同様に、登記期間の定めはない。
② 申請人
後見人の登記は後見人の申請によってする。(商登法41条1項)
③ 登記すべき事項(商登法41条1項)
未成年者の登記と違って、後見人の出生年月日は登記事項とされていない。
(イ)後見人の氏名又は名称及び住所並びに当該後見人が未成年後見人又は成年後見人のいずれかであるかの別 (ロ)被後見人の氏名および住所 (ハ)営業の種類 (二)営業所 (ホ)数人の未成年後見人が共同してその権限を行使するとき、又は数人の成年後見人が共同してその権限を行使すべきことが定められたときは、その旨 (ヘ)数人の未成年後見人が単独でその権限を行使すべきことが定められたときは、その旨 (ト)数人の後見人が事務を分掌してその権限を行使すべきことが定められたときは、その旨及び各後見人が分掌する事務の内容 |
④ 添付書面
(イ)後見監督人がないときはその旨を証する書面
具体的には、戸籍謄本又は登記事項証明書である。
(ロ)後見監督人があるときはその同意を得たことを証する書面
後見監督人の同意書と、その者が後見監督人であることを証する書面を添付する。
(ハ)後見人が法人であるときは、当該法人の登記事項証明書
ただし、当該登記所の管轄区域内に当該法人の本店又は主たる事務所がある場合及び申請書に会社法人等番号を記載した場合を除く。
(ニ)代理人によって申請する場合は、「委任状」
⑤ 登録免許税
(イ)本店所在地
申請1件につき、金1万8000円(登録免許税別表一、二十九(一)ハ)
(ロ)支店所在地
申請1件につき、金9000円(登録免許税別表一、二十九(二)イ)
後見人の登記 申請書 記載例 (本店所在地)
後見人の氏名及び住所 何県何市何町何丁目何番何号
甲野 太郎
営業所 何県何市何町何丁目何番何号
登記の事由
平成何年何月何日後見人の営業開始
登記すべき事項
後見人の氏名又は名称及び住所
何県何市何町何丁目何番何号
甲野 太郎 平成何年何月何日生
後見人に関する事項
後見人甲野太郎と甲野花子はそれぞれ単独で後見人の権限を行使する
被後見人の氏名及び住所
何県何市何町何丁目何番何号
甲野 一郎
営業所 何県何市何町何丁目何番何号
営業の種類 介護用品の販売
登記記録に関する事項 新設
登録免許税
金1万8000円
添付書類
後見監督人の同意書 1通
戸籍謄本 1通
委任状 1通
完了後の登記記録
(甲野太郎及び甲野花子2名の後見人がそれぞれ単独で後見人の権限行使ができる旨を定めた場合)
後見人の氏名又は名称及び住所 |
何県何市何町何丁目何番何号 甲野 太郎 (未成年後見人) |
後見人に関する事項 |
甲野太郎と甲野花子はそれぞれ単独で後見人の権限を行使する |
被後見人の氏名及び住所 |
何県何市何町何丁目何番何号 甲野 一郎 |
営業所 |
何県何市何町何丁目何番何号 |
営業の種類 |
介護用品の販売 |
登記記録に関する事項 |
新設 平成何年何月何日登記 |
(甲野花子も後見人として甲野太郎と権限の共同行使に関する規定を設けた場合)
後見人の氏名又は名称及び住所 |
何県何市何町何丁目何番何号 甲野 太郎 (未成年後見人) |
後見人に関する事項 |
甲野太郎と甲野花子は共同して後見人の権限を行使する |
被後見人の氏名及び住所 |
何県何市何町何丁目何番何号 甲野 一郎 |
営業所 |
何県何市何町何丁目何番何号 |
営業の種類 |
介護用品の販売 |
登記記録に関する事項 |
新設 平成何年何月何日登記 |
(*)甲野花子についても、後見人として同様の登記がなされる。
(後見人の事務分掌に関する規定を設けた場合)
後見人の氏名又は名称及び住所 |
何県何市何町何丁目何番何号 甲野 太郎 (成年後見人) 事務の分掌の規定 後見人甲野太郎が分掌する事務 ○○に関する事務 後見人甲野花子が分掌する事務 後見人甲野太郎が分掌する事務に含まれない一切の事項 |
■後見人の変更登記
後見人の登記の登記事項に変更が生じた場合、変更登記をする必要がある。
(1) 後見人の名称等の変更登記
① 事例
後見人が法人である場合、当該法人の名称又は住所(主たる事務所)に変更があった場合である。
② 登記申請手続
(イ)申請人
後見人が申請人となる。
(ロ)添付書面
当該法人の「登記事項証明書」
ただし、当該登記所の管轄区域内に当該法人の本店又は主たる事務所がある場合及び申請書に会社法人等番号を記載した場合を除く。
(ハ)登録免許税
a) 本店所在地
申請1件につき、金6000円(登録免許税別表一、二十九(一)ホ)
b) 支店所在地
申請1件につき、金6000円(登録免許税別表一、二十九(二)ロ)
(2) 営業所の移転登記
① 手続き
後見人が、営業所を他の登記所の管轄区域内へ移転したときは、旧所在地においては営業所移転の登記を、新所在地においては商登法40条1項各号に掲げる事項の登記を申請しなければならない。
この場合も、経由申請によらずに新旧両所在地において各別に登記の申請をすることになる。
② 登記申請手続
(イ)申請人
後見人本人である。
(ロ)登記の事由
新旧所在地共に、「営業所移転」と記載する。
(ハ)登記すべき事項
a) 旧所在地
「年月日営業所移転」と記載する。
b) 新所在地
商登法40条1項各号に掲げる事項
(ニ)添付書類
a) 旧所在地
「委任状」それ以外は、不要である。
b) 新所在地
「旧所在地において、登記したことを証する書面」「委任状」
(ホ)登録免許税
a) 新旧本店所在地
申請1件につき、金6000円(登録免許税別表一、二十九(一)ホ)
b) 支店所在地
申請1件につき、金6000円(登録免許税別表一、二十九(二)ロ)
(ホ)印鑑の提出
管轄外への営業所移転の場合、新営業所所在地において、再度後見人の印鑑を提出しなければならない。
(3) 営業の種類の変更
① 事例
後見人の営業の種類が増加したような場合である。
② 登記申請手続
(イ)申請人
後見人の申請による。
(ロ)登記すべき事項
「変更後の営業の種類」及び「変更年月日」である。
(ハ)添付書面
後見人の登記の場合と同様である(商登法42条3項)ただし、42条1項3号は準用されていないため、後見人が法人である場合の登記事項証明書の添付は不要である。
(ニ)登録免許税
金6000円(登録免許税別表一、二十九(一)ホ)
(4) 後見人の消滅の登記
① 実体手続
次の事由が生じたときは、後見人の登記について消滅の登記をしなければならない。
(イ)後見人が営業を廃止したとき
(ロ)被後見人が行為能力者となったとき
(ハ)後見人が退任したとき
後見人の退任事由としては、「辞任」「解任」「後見人の死亡」のほか、「後見人の破産手続開始決定」「後見人又はその配偶者、直系血族が被後見人に対して訴訟をした」場合のように、後見人の欠格事由に該当したような場合もある。
② 登記申請手続
(イ)なすべき登記
後見人が退任した場合には、その消滅の登記をするほか、後見人が退任して新たな後見人が選任されたときは、新後見人について新たな後見人の登記をしなければならない。なお、後見人の変更登記というものはない。
(ロ)申請人
未成年者が行為能力者となった場合
a) 後見人
b) 被後見人であった者
未成年被後見人が成年に達したことによる消滅の登記、成年被後見人について後見開始の審判が取り消されたことによる消滅の登記の申請は、被後見人であった者も申請することができる 。(商登法41条2項)
後見人の退任の場合
a) 後見人
b) 新後見人(商登法41条3項)
解任や死亡の場合に特に必要となる。なお、家庭裁判所による解任の場合でも、裁判所書記官による嘱託はなれず申請によらなければならない。この場合、新後見人のみならず、解任された旧後見人からも退任登記が可能である。
(ハ)添付書面
a) 営業の廃止の場合
「委任状」それ以外は、不要である。
b) 被後見人が行為能力者となった場合
「委任状」のほか、「被後見人が成年に達したことを証する戸籍謄本」や「成年被後見人につき後見開始の審判取消しの審判書の謄本」等 cf 未成年者の消滅の登記の場合
c) 後見人の退任の場合
「委任状」のほか、「後見人の退任を証する書面」である。具体的に、辞任による場合には、「家庭裁判所の辞任許可審判書の謄本及びその確定証明書」解任による場合には、「解任許可審判書の謄本及びその確定証明書」等である。
(ニ)登録免許税
a) 本店所在地
申請1件につき、金6000円(登録免許税別表一、二十九(一)ホ)
b) 支店所在地
申請1件につき、金6000円(登録免許税別表一、二十九(二)ロ)