- 商業登記法ー42.未成年者の登記
- 1.未成年者の登記
- 未成年者の登記
- Sec.1
1未成年者の登記
■未成年者の登記
(1) 意義
未成年者の登記とは、未成年者が法定代理人の同意を得ないで、特定の営業を営むことができる能力を有することを公示するための登記である。営業の許可を得た未成年者は、その営業に関しては成年者と同一の行為能力を有する(民法6条1項)ため、そのことを公示することを目的とする。
(2) 実態手続
① 営業の許可
未成年者が法定代理人の許可を得て、商法4条の営業を行うときは、その登記をしなければならない。商法4条の営業とは、「商行為をすることを業とする場合」「店舗その他これに類似する設備によって物品の販売をすることを業とする場合」「鉱業を営む場合」である。
② 許可権者
親権者がいるときは親権者が、いないときは未成年後見人が許可権者となる。未成年後見人が許可を与える場合に、未成年後見監督人がいるときは、その同意を得なければならない。(民法857条ただし書)
(3) 登記申請手続
① 登記期間
商号の登記の場合と同様に、登記期間の定めはない。
② 申請人
未成年者の登記は未成年者の申請によってする。(商登法36条1項)
③ 登記すべき事項(商登法35条1項)
(イ)未成年者の氏名、出生の年月日及び住所
(ロ)営業の種類
(ハ)営業所
④ 添付書面
(イ)法定代理人の許可を得たことを証する書面(商登法37条1項)
具体的には、親権者又は未成年後見人の許可書のほか、法定代理人であることを証する書面(戸籍謄本等、後見の登記事項証明書等)を添付する。ただし、申請書に法定代理人の記名押印があるときは、許可書の添付は不要となる。
(ロ)未成年後見監督人があるときは、その同意を得たことを証する書面等(商登法37条2項)
この場合、同意書のほか、その者が未成年後見監督人であることを証する書面も添付しなければならない。
(ハ)未成年後見監督人がないときは、その旨を証する書面(商登法37条2項)
(ニ)代理人によって申請する場合は、「委任状」
⑤ 登録免許税
(イ)本店所在地
申請1件につき、金1万8000円(登録免許税別表一、二十九(一)ハ)
(ロ)支店所在地
申請1件につき、金9000円(登録免許税別表一、二十九(二)イ)
⑥ 印鑑の提出
未成年者は、その印鑑を登記所に届け出なければならない。(商登法20条)
未成年者の登記 申請書 記載例(親権者による許可の場合) (本店所在地)
未成年者の氏名及び住所 何県何市何町何丁目何番何号
甲野 太郎
営業所 何県何市何町何丁目何番何号
登記の事由
平成何年何月何日未成年者の営業の許可
登記すべき事項
未成年者の氏名及び住所
何県何市何町何丁目何番何号
甲野 太郎 平成何年何月何日生
営業所 何県何市何町何丁目何番何号
営業の種類 文房具の販売
登記記録に関する事項 新設
登録免許税
金1万8000円
添付書類
親権者の同意書 1通
戸籍謄本 1通
委任状 1通
完了後の登記記録
未成年者の氏名及び住所 |
何県何市何町何丁目何番何号 甲野 太郎 平成何年何月何日生 |
営業所 |
何県何市何町何丁目何番何号 |
営業の種類 |
文房具の販売 |
登記記録に関する事項 |
新設 平成何年何月何日登記 |
■未成年者登記の変更登記
未成年者の登記の登記事項に変更が生じた場合、変更登記をする必要がある。未成年者の登記の変更登記の場合も、登記期間の定めはなく遅滞なく行えばよい。
(1) 営業所の移転登記
① 手続き
未成年者が、営業所を他の登記所の管轄区域内へ移転したときは、旧所在地においては営業所移転の登記を、新所在地においては商登法35条1項各号に掲げる事項の登記を申請しなければならない。
なお、会社の本店移転の登記と異なり、経由申請の形式ではなく、新旧所在地の管轄登記所に各別に申請する点に注意!
② 登記申請手続
(イ)申請人
未成年者本人である。
(ロ)登記の事由
新旧所在地共に、「営業所移転」と記載する。
(ハ)登記すべき事項
a) 旧所在地
「年月日営業所移転」と記載する。
b) 新所在地
商登法35条1項各号に掲げる事項
(ニ)添付書類
a) 旧所在地
「委任状」それ以外は、不要である。
b) 新所在地
「旧所在地において、登記したことを証する書面」「委任状」
(ホ)登録免許税
a) 新旧本店所在地
申請1件につき、金6000円(登録免許税別表一、二十九(一)ホ)
b) 支店所在地
申請1件につき、金6000円(登録免許税別表一、二十九(二)ロ)
(ホ)印鑑の提出
管轄外への営業所移転の場合、新営業所所在地において、再度未成年者の印鑑を提出しなければならない。
(2) 営業の種類の変更
① 増加による変更の場合
(イ)申請人
未成年者の申請による
(ロ)添付書面
増加した営業につき、新たに許可が必要となるため、最初の未成年者の登記と同様の書類の添付が必要となる。
(ハ)登録免許税
金6000円(登録免許税別表一、二十九(一)ホ)
② 制限による変更の場合
(イ)申請人
未成年者のほか、法定代理人も申請人となることができる。
(ロ)添付書類
a) 未成年者が申請人の場合
「委任状」のみ。
b) 法定代理人が申請人の場合
「委任状」のほか、「法定代理人であることを証する書面」の添付も要する。
(ハ)登録免許税
金6000円(登録免許税別表一、二十九(一)ホ)
■未成年者の消滅の登記
(1) 手続き
未成年者について、営業の許可の取消し、営業の廃止、未成年者の死亡、未成年者の成年到達等があった場合は、未成年者消滅登記をしなければならない。
(2) 登記申請手続
① 申請人
(イ)未成年者の営業の許可の取消しによる消滅登記の場合
未成年者のほか、法定代理人も申請人となることができる。
(ロ)未成年者の死亡による消滅登記の場合
法定代理人の申請によってする。
(ハ)未成年者が成年に達したことによる消滅登記の場合
a) 未成年者であった者
未成年者であった者の申請による。なお、この場合、未成年者の法定代理人であった者から申請することはできない。
b) 登記官の職権抹消
未成年者の生年月日は登記事項とされており、成年到達は登記記録上、明らかなので登記官が職権で消滅の登記をすることもできる。(商登法36条4項)
cf 未成年者が婚姻により成年に達したとみなされたことによる未成年者の登記の抹消は、登記記録上明らかでないので登記官の職権による抹消はなされない。
② 添付書面
(イ)未成年者の営業の許可の取消しの場合
a) 未成年者が申請する場合
「委任状」のみで足りる。
b) 法定代理人が申請する場合
「委任状」のほか、「法定代理人であることを証する書面」の添付も要する。なお、営業の許可の取消しがあったことを証する書面の添付は不要である。
(ロ)未成年者の死亡の場合
「委任状」のほか、「未成年者が死亡したことを証する書面」の添付も要する。
③ 登録免許税
金6000円(登録免許税別表一、二十九(一)ホ)