• 商業登記法ー41.商号の登記
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1商号の登記

堀川 寿和2022/01/31 15:01

商号の意義

 商号とは、商人がその営業上自己を表示するために用いる名称をいう。会社及び外国会社を除く商人(個人商人)は、その氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができ、その商号の登記をすることができる。(商法11条)この商号の登記をするか否かは個人商人の自由であり、商号を使用していてもこれを登記しなくてもよい。

cf 会社は商号が登記事項とされているため、事実上商号の登記は義務ということになる。

 

商号の選定

(1) 商号選定の自由

 いかなる商号を選定するかは原則として商人の自由である。したがって、運送業を目的としていない会社であっても商号中に「運送」という文字を商号中に使用しても差し支えない。なお、会社はその名称を商号とする。(商法6条1項)

 

(2) 商号選定の制限

会社の種類の明示義務

 会社は、その種類に従って、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない。(会社法6条2項)また、会社は、その商号中に、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。(同条3項)

② 会社と誤認させるおそれのある文字の使用禁止

 会社でない者は、その名称又は商号中に会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。(会社法7条)

③ 法令により使用を禁止された文字の使用制限

 商号中には、法令により使用を禁止された文字を用いることができない。(S51.5. 6民四2909)

 例えば、銀行でない者が商号中に「銀行」という文字を使用することができない。

④ 記号、図形、紋様の使用の禁止

 商号は、名称であるから文字をもって表示しなければならず、記号、図形、紋様等をもって商号とすることはできない。(S41.6. 8民甲1213)ただし、ローマ字その他の符号で法務大臣の指定するものは用いることができる。

 

先例

(H14.7.31民商1839号)

 

ローマ字(大文字・小文字)、「アラビア数字(1、2、3)」、「& (アンパサンド)」「’(アポストロフィー)」「,(コンマ)」「‐(ハイフン)」「.(ピリオド)」「・(中点)」は用いることができる。

⑤ 他の商人と誤認させる名称等の使用の禁止

 何人も、不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。(商法12条1項)この規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある商人は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる(同条2項)

⑥ 同一所在場所における同一商号の登記の禁止

 商号の登記は、その商号が他人の既にした商号と同一であり、かつ、同一の営業所(会社にあっては、本店)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない。(商登法27条)

 

(3) 商号の数

① 会社の商号

 会社の商号は1個に限られ、2個の商号を用いることはできない。

② 個人商人の商号

 個人商人の場合は、営業の種類が異なれば、営業の種類ごとに異なった商号を用いることができる。営業の種類が同じであれば、たとえ営業所が異なっても複数の商号を用いることはできない。(S42. 7.11民四463)

商号の新設の登記

(1) 商号の登記

 商人(会社及び外国会社を除く。)が商号を選定したときは、その商号の登記をすることができる。(商法11条2項)個人商人の場合、商号を用いて営業を営んでいても、商号を登記するか否かは商人の自由である。なお、小商人は商号の登記はできない。

 

(2) 登記申請手続

① 登記期間

 個人商人の商号の登記については、登記期間の定めはない。

② 申請人

 商号使用者たる個人商人が申請人となる。営業所を設置した後、商号使用者が死亡した場合において、商号新設の登記をするときは、相続人が被相続人の名で商号の登記をすることができない。この場合は、相続人の名で申請すべきこととなる。

cf 商号の登記を申請した者が死亡したときには.相続による変更登記をすることができる。

③ 登記事項

 商号の登記において登記すべき事項は,次のとおりである。(商登法28条2項)

(イ)商号

(ロ)営業の種類

(ハ)営業所

 商号の登記は、営業所ごとにしなければならない。(商登法28条1項)したがって、同一市町村内に2個の営業所があるときでも、商号の登記は営業所ごとに各別にしなければならない。

(ニ)商号使用者の氏名及び住所

 複数人が共同で営業する場合、商号使用者が複数となることは可能である。(S37.10.12民甲2927)

④ 添付書面

 商号新設の登記には、代理人によって申請する場合の委任状の他に、何らの書面の添付も要しない。(商登法18条)

⑤ 登録免許税

 本店所在地では申請1件につき、金3万円(別表一、二十九(一)イ)

 支店所在地では申請1件につき、金9000円(別表一、二十九(二)イ)である。

⑥印鑑の提出

 商号使用者は、あらかじめその印鑑を提出しなければならない。(商登法20条1項)

 

商号の新設の登記 申請書 記載例                   (本店所在地)

登記の事由

  商号新設

登記すべき事項

  商号  ABC商店

  営業所 何県何市何町何丁目何番何号

  商号使用者の住所及び氏名

      何県何市何町何丁目何番何号

      甲野 太郎

  営業の種類 文房具の販売

  登記記録に関する事項 新設

登録免許税

   金万円

添付書類

   委任状                        1通

 

  完了後の登記記録

商号

ABC商店

営業所

何県何市何町何丁目何番何号

商号使用者の住所及び氏名

何県何市何町何丁目何番何号

甲野 太郎

営業の種類

文房具の販売

登記記録に関する事項

新設

                         年月日登記