• 商業登記法ー30.持分会社の清算人の登記
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1持分会社の清算人の登記

堀川 寿和2022/01/31 14:22

清算開始原因

 持分会社は、次に掲げる場合には、清算をしなければならない。(会社法644条)

① 解散した場合(合併による解散及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)

② 設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合

③ 設立の取消しの訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合

清算人及び代表清算人

(1) 清算人の設置

 清算持分会社には、1人又は2人以上の清算人を置かなければならない。(会社法646条)

 

(2) 清算人の就任

 次に掲げる者は、清算持分会社の清算人となる。(会社法647条1項)

業務を執行する社員(次の②③に掲げる者がある場合を除く。)

② 定款で定める者

③ 社員(業務を執行する社員を定款で定めた場合にあっては、その社員)の過半数の同意によって定める者

 

(3) 裁判所による選任

 上記の規定により清算人となる者がないときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、清算人を選任する。(同条2項)さらに、会社法641条4号(社員が欠けたこと)又は7号(解散を命じる裁判)に掲げる事由によって解散した清算持分会社については、裁判所は、利害関係人もしくは法務大臣の申立てにより又は職権で、清算人を選任する。(同条3項)

 

(4) 任意清算の場合

 持分会社(合名会社及び合資会社に限る。)は、定款又は総社員の同意によって、当該持分会社が次の①から②までに掲げる事由によって解散した場合における当該持分会社の財産の処分の方法を定めることができる。(会社法668条1項)

① 定款で定めた存続期間の満了

② 定款で定めた解散の事由の発生

③ 総社員の同意

 任意清算による場合には、清算人は就任しない。したがって、代表社員が解散の登記のみを申請する。

 

(5) 代表清算人

① 清算人は、清算持分会社を代表する。ただし、他に清算持分会社を代表する清算入その他清算持分会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。(会社法655条1項)

② 清算人が2人以上ある場合には、清算人は、各自、清算持分会社を代表する。(同条2項)

③ 清算持分会社は、定款又は定款の定めに基づく清算人(裁判所が選任したものを除く。)の互選によって、清算人の中から清算持分会社を代表する清算人を定めることができる。(同条3項)

④ 会社法647条1項1号の規定により業務を執行する社員が清算人となる場合において、持分会社を代表する社員を定めていたときは、当該持分会社を代表する社員が清算持分会社を代表する清算人となる。(同条4項)

⑤ 裁判所が清算人を選任する場合には、その清算人の中から清算持分会社を代表する清算人を定めることができる。(同条5項)

 

登記申請手続

(1) 登記期間

① 法定清算人が清算持分会社の清算人となった場合

 法定清算人が清算持分会社の清算人となったときは、解散の日から2週間以内に、その本店の所在地において、清算人の登記しなければならない。(会社法928条2項)

② 法定清算人以外の清算人が選任された場合

 清算人が選任されたときは、2週間以内に、その本店の所在地において、清算人の登記しなければならない。(会社法928条3項)

 

(2) 登記の事由

 「年月日清算人の選任」、法定清算人の場合には、「年月日業務執行社員の清算人就任」等と記載する。

 年月日は、清算人を選任した日、法定清算人の場合は解散の日を記載する。

 

(3) 登記すべき事項

① 清算人の氏名又は名称及び住所

② 清算持分会社を代表する清算人の氏名又は名称(清算持分会社を代表しない清算人がある場合に限る)

③ 清算持分会社を代表する清算人が法人であるときは、清算人の職務を行うべき者の氏名及び住所

* 持分会社の清算人は氏名(名称)及び住所が登記事項になる。さらに持分会社を代表しない清算人がいる場合には代表清算人は氏名(名称)も登記事項になる。株式会社の清算人は氏名が、代表清算人は氏名•住所が常に登記事項である点と比較。また、持分会社においては法人が社員となれるため清算人が法人ということも可能であるが、株式会社においては法人は清算人となることはできない。

 

(4) 添付書面

① 清算人に関する書面

 次に掲げる者が清算持分会社の清算人となった場合の清算人の登記の申請書には、それぞれに定める書面を添付しなければならない。(商登法99条1項、111条、118 条)

(イ)業務を執行する社員

定款

(ロ)定款で定める者

定款」「就任を承諾したことを証する書面

(ハ)社員(業務を執行する社員を定款で定めた場合にあっては、その社員)の過半数の同意によって定める者

(業務執行(社員)の一致を証する書面」「就任を承諾したことを証する書面

(二)裁判所が選任した者

選任審判書

* 株式会社の最初の清算人の登記の際には、常に「定款」の添付が必要であった点と比較。

② 代表清算人に関する書面

(イ)法定代表清算人

特になし。

(ロ)定款で定めた者

定款」又は定款変更に関する「総社員の同意書

(ハ)定款の定めによる清算人の互選で定めた者

定款」「互選書」「就任承諾書

(ニ)裁判所が選任した者

裁判所の「選任審判書」等

③ 清算人が法人である場合

(イ)法定代表清算人が法人である場合

1. 当該法人の登記事項証明書

 ただし、当該登記所の管轄区域内に当該法人の本店又は主たる事務所がある場合、又は申請書に会社法人等番号を記載した場合を除く。

2. 当該職務を行うべき者の選任に関する書面

 取締役会や理事会の議事録などである。

3. 当該職務を行うべき者の就任承諾書

(ロ)裁判所が選任した法定清算人が法人である場合

 上記(イ)1. 2. 3. の書面を添付書面とする。

(ハ)定款、定款の定めによる清算人の互選による代表清算人が法人である場合

 代表清算人の職務を行うべき者の登記について、(イ)1. 2. 3. の書面を添付書面とする。

 (ニ)代表清算人以外の清算人が法人である場合

 法定代表清算人、裁判所が定めた清算人を除き、上記(イ)1. 書面を添付書面とする。ただしこの場合も当該登記所の管轄区域内に当該法人の本店又は主たる事務所がある場合、又は申請書に会社法人等番号を記載した場合を除く。

(ホ)代理人によって申請する場合、「委任状

 

(5) 登録免許税

 申請1件につき、金9000円である。(登録免許税別表一、二十四(四)イ)

 

清算人登記 申請書 記載例               (法定清算人の各自代表の場合

登記の事由

  年月日業務執行社員の清算人就任

登記すべき事項

  何県何市何町何丁目何番何号

  清算人 A

  何県何市何町何丁目何番何号

  清算人 B

登録免許税

   金9000

添付書類

   定款                         1通

   委任状                        1通

 

(業務執行社員の過半数で清算人を選任し、定款の定めに基づく清算人の互選で代表清算人を選任した場合)

登記の事由

  年月日清算人及び代表清算人の選任

登記すべき事項

  何県何市何町何丁目何番何号

  清算人 甲

  何県何市何町何丁目何番何号

  清算人 乙

  何県何市何町何丁目何番何号

  清算人 丙株式会社

  代表清算人 丙株式会社

  何県何市何町何丁目何番何号

  職務執行者 丙

登録免許税

   金9000

添付書類(業務執行)社員の過半数の一致を証する書面     1通

   定款                         1通

   清算人の互選書                    1通

   就任承諾書                      4通

   登記事項証明書                    1通

   職務執行者の選任を証する書面             1通

   職務執行者の就任承諾書                1通

   委任状                        1通